【失敗談】撤退編《初めての富士山の章》

初めての富士登山にチャレンジ

僕が初めて富士山に登った(登ろうとした)のは、2006年06月のことでした。それは山登りを始めてまだ半年程度しか経っていない頃のことです。

今回はその時のお話です。

須走口五合目、前日泊

富士登山で憂慮しなくてはならないことのひとつが高山病と言ってもいいでしょう。なので、僕はスタートする前に十分に身体を高所に慣らす必要があるとあると考えました。なので、少しでも早く五合目に着いて、身体を高所に慣らさなくてはイカンっ! ということで、週末に仕事が終わった後、睡眠を取らずに、須走口の五合目に向かいました。

午前1時に須走口の五合目に到着。下界ではもう夏の蒸し暑さが感じられはじめた6月の某日。ここ富士山の五合目ではまだ、冬のような寒さでした。しかし、それもあらかじめ想定していたので、厚めの毛布を持って来ています。

予定では空が明るくなる頃にスタートしようと思っているので、まだ、数時間は仮眠が取れるはず。しかもその間に十分に高度順応出来ると思っていました。しかし、寒さのせいなのか? はたまた、初めての富士登山で興奮しているのか? 僕はほとんど眠ることができませんでした。

やがて、空が白み、富士山を赤く染め始めろと、それまで影にしか見えなかった山体がはっきりと見えるようになり、その巨大な山体にちょっとビビりました。と共に、これから日本一の山に登るんだという思いで身が引き締まりました。

眠れぬままのスタート

起床。そそくさと準備をして、朝食用に昨晩コンビニで買っておいたパスタを胃に流し込んだ。

車から出ると、6月だというのに、まだ白い息が出る。やっぱり寒い。

午前四時半、須走口五合目をスタート。人気はまだまばらだ。

眼下には雲海が広がっている。まだまだ、山の初心者の僕にはこの規模の雲海は初めてだったのでちょっと興奮している。上を見るとうっすらと雲が見える。その薄い雲越しに青空が見えるので、天気は大丈夫そうだ。だけど、雲海の下の下界はきっと天気が悪いんだろうなぁ、と思うとちょっと得した気分なった。

夜はしっかりと明けてはいるけど、ここ須走口はスタートが樹林帯なので、まだ薄暗い森に入って行く。

スタートしてすぐのところにある小御嶽神社でお祈りをすませ、大きく息を吸い、富士山頂に向かい、小さな一歩を出した。

前述の通り、須走口は他のメインの登山口とは違って、樹林帯から始まる。なので、まだ富士山を登っている感は少ない。しかし、明らかにホームグランドの丹沢とは植生が違っている。

しばらく進むと、目の前が開けた。まだ薄いヴェールのような雲はあるが、山頂方面が一望出来る。富士山って思っていたより凸凹している。遠くから見る富士山は、(見る角度によるけど)綺麗な円錐形なのに、近くで見ると。谷や尾根が入り組んでいるうえに、地面が崩れやすく、思っていたより歩きづらい。

重装備

今回が初めての富士登山だけど、きっと最後の富士登山になると思っていた。なので、写真を趣味としている僕としては、カメラ機材をガッツリ持ってきている。65リッターのカメラ用のザックにコンパクトデジカメ、(デジタル)一眼レフ、交換レンズ、中型の三脚、その他撮影機材、と写真を撮る気満々の装備を持って来ている。当然、それプラス山の装備もあるので、なかなかの重量になっていると思う。

高山病?

ー合目(長田山荘)まではコースタイムよりは少々遅れているけど、まあまあのペースで歩けていると思う(コースタイムが60分に対して78分掛かった)。ここでは休憩を取らずに先へ進んだ。

六合目から本六合目(瀬戸館)までもほぼ同じペースで歩いた(コースタイム30分に対して47分)。

本六合目から七合目(大陽館)はだいぶペースが落ちて、コースタイム60分に対して120分も掛かった。つまり、倍の時間が掛かっている。

七合目から本七合目(見晴館)までも、コースタイム30分に対して60分掛かった。この辺りから頭がボーッとするようになった。今まではペースこそ遅いものの、体調の大きな変化は無かったけど、本七合目を過ぎた辺りから、足が上がらなくなった。そして、眠気が激しく、

「くっそー! 寝不足が祟ったぜ!」

なんてことを考えたけど、よくよく考えてみると、高山病の初期症状なのは明らかだ! しかし、いかんせん初めての経験なので、高山病の症状がピンとこない。

もちろん、知識としては、高山病はこんな症状が出るんだよ。ということは理解していたつもりだけど、いざ、自分の身体に起こると正しく対応できない。

数歩あるいたら、立ち止まって目をつむり、数歩あるいたら、立ち止まって目をつむり、を繰り返す。当然こんなんじゃペースは上がらない。

七合目を出てしばらくすると、静岡から来たという二人組のベテランさんと一緒になった。この人たちは年に数回富士山に登っていると言っていた。人と話していると気が紛れて少し元気になったけど、その人たちの歩くペースには付いていけない・・・。

結局、自分はゆっくり行くので、先に行って下さいと、静岡の人と別れた。その後しばらくして、後ろからもう一人抜いていった。

八合目(江戸屋)に到着。本七合目からコースタイム30分に対して60分掛かっている。やはり倍の時間が掛かる。

ここ八合目で、先程の静岡の人たちが休憩していた。

撤退を決めた理由

僕は八合目の少し手前でリタイアを決めていた。もう限界だった。背中のザックが重過ぎる。ショルダーベルトが肩に食い込んで、そのまま両腕が切断されそうだ。恐らく実際は10数キロ程度だとは思うけど、体感的には象でも背負っているかのようだった。何度、ザックを投げ捨てて、空身で登ろうと思ったか分からない。しかし、実際にリタイアを決めたのは、これではなく、自分の手がやたら黄色くなっていたのに気づいたからだ。自分でも気持ち悪いくらい黄色い。思わず、えっ? えっ? って自分の身体をあちこち見てみる。すると、露出している肌が全て黄色い。思わず、

「なんじゃ、こりゃ!」

と叫びそうになる。

僕の目にはこう見えていました(加工しています)

眠気も吹っ飛んだ。と言いたいが、そんなことは無く、相変わらず眠気は頭の芯にマッタリとまとわりついていて離れてはくれない。

高山病で色々な症状があるのは本とか読んで、ある程度は理解していたけど、肌が黄色くなるなんて知らない。聞いたこともない。少なくても、ぼくが読んだ本には書いて無かった。

落ち着け、オレ。

ここで、ふと疑問に思う。これって、本当に肌が黄色くなっているのか? それとも、自分の目の方がおかしくなって、黄色く見えているだけなのか。それを確かめるには、他の人の肌を見てみれば分かるじゃん。と気付く。しかし、そんな時に限って近くに人がいない。遠くの方に豆粒のような人影はあるけど、肌の色なんて確認できない。

そこで、ふとデジカメに目が行った。そうだ! デジカメで自分の肌を撮ってみればいいんじゃん。と気付く。もし、本当に肌が黄色くなっていたら、当然、デジカメで撮られた写真の肌は黄色くなっているはずだし、もし、黄色くなっていなかったら、おかしいのは自分の目の方だと判断出来る。

いなかた
いなかた

もちろん、目がおかしくなっていたら、その場で確認しても意味が無いので、帰宅後に自分の肌が黄色く見えない時に確認した。結局、肌が黄色くなっていたのでは無く、自分の目の方がおかしくなっていたようだ。

そんなこともあって、八合目の少し前で撤退を決めた。

先行して休憩していた静岡の人に撤退の意志を伝えて、下山路を教えてもらった。もう少し頑張ってみましょうよ、と言われたけど、丁寧に断り、再び挑戦することを誓った。

いなかた
いなかた

この時、二人の顔色を(黄色いか)確認すればよかったけど、もはやそんな状態ではなく、ひたすら無事に下山することを考えていました。

下山

下山路を下り始めてしばらくすると、眠気も無くなり、知らないうちに肌の色も普通に見えるようになっていた。

初期の高山病の特効薬は標高を下げることだ、と聞いたことがあるが、まさに特効薬だった。体調は普通に戻ったけど、再び登り返そうなんて気持ちは、天と地がひっくり返っても無い。無いったら無い。

須走口の下山道には砂走りというところがあって、そこを下ることを楽しみにしていたけど、実際に歩いたら、思っていたより距離があり、しかもガスってきて、ひたすら辛かった。しかし、体調が回復するにつれ、周りを見渡す余裕も出てきて、いつも登っている丹沢とは全く違う景色にちょっとワクワクしている自分がいた。

砂走り五合目に着いた頃には、絶対に再挑戦して山頂に立ってやるぞー! と心に強く誓っていた・・・。

というのが僕の初めての富士登山でした。まぁ、色々と反省点はありますが、悔しさよりも、楽しかった! というのが
正直なところです。日本一の山ですし、僕ごときが簡単に登れたら面白くないですよね。

撤退の原因と反省

結局、結果的には始めての富士登山は途中撤退というカタチで終わりました。

しかし、この失敗からは得ることも多かったと思います。

まず、そもそも荷物が重過ぎました。初めての富士登山で65リッターのザックなんて狂気の沙汰でしたね。しかも、普通の山用のザックではなく、カメラ用なので、何も入っていなくてもクソ重い。一眼レフや三脚を持っていったけど、結局、最後までどちらもザックから出すこともなかった。これじゃあ、ただのオモリにしかならない。何の罰ゲームだ? 

また、高所順応のための前日泊(厳密に言うと当日泊?)も完全に裏目に出た。ただ寝不足マンを製造しただけだった。 

結局、この後、僕は2021年時点で13回富士山の山頂を踏みました。この時の経験が生きたことは説明するまでもないでしょう。

おまけ

僕の富士登山七箇条

最後に、その後の僕の富士登山で注意していること、または、富士登山だけで行っていることを書いてみます。これから富士登山に挑戦する人の参考になれば幸いです。

一、睡眠は十分に取る。

結局は体調を万全にするってことですね。もちろん、前日にお酒を飲むこともしません。当たり前ですねー。

一、高度順応は1時間で十分。

これは人によるのかもしれないけど、僕は五合目に到着したら、1時間ほどブラブラして高所に身体を慣らします。もっとも、これをしたからといって、絶対に高山病の症状が出ないわけでは全くなく、出る時は出ますが・・・。

一、荷物は可能な限り、軽量化に努める。

普段の山登りではいらないものも持って行くこともありますが、富士山を登るときは必要最小限にしています。恐らく水を別にすると5kg以下だと思います、

一、水分補給はハイドレーションで

普段の山登りでは水分補給するのにナルゲンボトルを使用していますが、富士山に限ってはハイドレーション(ザックの中に水の入った袋を入れて、そこからチューブを胸元まで伸ばし、そのチューブを通して水分補給をするもの)を使います。

理由はふたつです。

ひとつ目は、水分補給がスムーズに行えるからです。ボトルだと、ザックの中に入れていたらわざわざザックを下さなくてはならなりません。なので、ついつい水分補給を後回しにしがちなってしまいます。それが原因で高山病になっていたらそれこそ本末転倒です。なので、より水分補給がしやすいハイドレーションを使用しているというわけです。

じゃあ、ボトルをザックの中ではなくて、サイドポケットに入れておけば、わざわざザックを下さなくてもいいんじゃね? と思うでしょう。正解です。僕も普段の山登りの時はそうしています。しかし、これが富士山でハイドレーションを使うふたつ目の理由ですが、もし、ザックからボトルを取り出そうとして、または、水分補給の後、再びサイドポケットに入れようとして、落としてしまったら・・・。まぁ、大概の場合は、その場でコロコロする程度だとは思いますが、もし、そのボトルが転がり始めてしまったら・・・。あ〜! 水がもったいないよー! なんて言っている場合ではない。もし、転がり始めたら、そのボトルはもはや弾丸と言っても過言ではないでしょう。自分より下にいる人に多大な危険が降り掛かる事になります。そうならないようにするために、富士山では落とてしまうような物には最大の注意を払う必要があると思っています。

ちなみに僕が富士登山での水分補給量はだいたい2リッター程度です。なので、スタート時に2リッターの容量のハイドレーションを満タンにしておくと、下山後、五合目に戻ってくる時にちょうどなくなります。

このハイドレーションは一見便利なことばかりだと思いますが、難点もあります。それは残量が分からないということです。もちろん、ザックをおろして、ハイドレーションを引きずり出し、直接確認すれば分かるんですが、行動中は背中のザックに入っているので分かりません。水分補給が楽に行えるので、気にしなずにゴクゴク飲んでいると、あっという間に無くなります。途中で補給出来るような場合は問題無いですが、それが出来ない場合は要注意です。

もちろん、そういう難点があるのをメーカーは理解しているので、ホースの途中に取り付けて水分量を確認できる装置なんてのもあります。しかし、慣れれば残量はある程度分るようになります。

一、ゼリー飲料を持って行く

これは少々重いのが難点ですが、いつも持っていっています。ある意味、僕にとってはお守りみたいなものです。

今回のお話のちょうどひと月後に富士山の初登頂を成功させて、八合目まで降りてきた時のことですが、僕はフラフラで登山道の脇に座り込んでしまいました。そこで、多少の空腹を感じたので、行動食用に持ってきていた羊羹(よく山の行動食で食されている、手のひらに収まる小さいやつ)を食べようと思いました。しかし、固形物が喉を通らない。全く通らない。20分掛かってようやく水で流し込んだくらいです。それ以来、そのような時でも、食べられる物を色々試行錯誤して、最終的にゼリー飲料にたどり着きました。これなら、固形物が喉を通らない時でも大丈夫でした。

今では、そこまでヘロヘロになることは(ペース配分が分かっているので)無いですが、八合目か七合目まで下ってきた時、ラストスパートの前に食べる(飲む)ようにしています。

一、カメラはコンパクトデジカメで十分

写真を趣味にしているので、一眼レフを持って行きたいのはやまやま(山だけにwww)ですが、それで山頂に立てないのは本末転倒ですよね。なので、最近はコンパクトカメラ(以下に歴代富士登山で使用したカメラを列挙します)一択ですね。これでも、十分に綺麗な写真は撮れます。最近ではスマホのカメラでもいいんじゃね? なんて思ってもいますが、そこは微妙に譲れないところですねwww

  • 初登頂時使用カメラ CANON PowerShot A80
  • 二回目登頂時使用カメラ Panasonic DMC-TZ1
  • 三回目登頂時使用カメラ CANON PowerShot A640
  • 四回目登頂時使用カメラ RICOH Caplio R6
  • 五回目登頂時使用カメラ RICOH Caplio GX100
  • 六回目登頂時使用カメラ RICOH Caplio GX100
  • 七回目登頂時使用カメラ Panasonic DMC-TZ1
  • 八回目登頂時使用カメラ RICOH GXR
  • 九回目登頂時使用カメラ RICOH GXR
  • 十回目登頂時使用カメラ RICOH GXR
  • 十一回目登頂時使用カメラ RICOH GXR
  • 十二回目登頂時使用カメラ RICOH GXR
  • 十三回目登頂時使用カメラ CANON PowerShot G5X

一、自分のペースで登る

「自分のペースで登る」
これは当たり前のことですが、特に夏の富士登山ピーク時には人もたくさんいて、なかなか自分のペースを守るのが難しかったりします。そもそも、初めて富士山に登る時はそのペースすら分かりませんよね。それに、人によっても違うので、このくらいのスピードで登りましょうとは言えません。ひとつの目安としては、コースタイムもありますが、僕の場合は、必ずしもコースタイム通りと言うわけにはいきません。大抵はコースタイム+10〜20%程度です。いつも本当に、このコースタイムで登れる人っているのかよ!? って思っていますが、調子の良い時は僕でもコースタイム内で登れることもあります。

なので、このペースは絶対というものはありません。一個人でさえ、その日の調子によってなかり違います。しかし、富士登山の時に気をつけていることはあります。始めはなるべくゆっくり登ります。周りの人はまだ元気なのでガンガンに追い抜かれていきますが、気にしません。身体が慣れてきたら少しペースを上げます。ここでギアを上げるほどスピードアップすると、途中でバテるのであくまで少しです。逆にこの時スピードアップに失敗してペースが上げられなかった時は、時間が掛かりすぎて途中でバテるので、このタイミングが難しいです。たとえタイミングよくペースを上げられても、九合目辺りで体力の限界が見えてくるので、そこからは根性です。絶対に山頂に立つんだ! という思いだけで足を動かし続けます。

休憩に関してはだいたい小休止(10分程度)2〜3回、大休止(30分程度)は1〜2回がいつものパターンです。もちろん、雪がある時などはあまり長く休憩すると、身体が冷えるので、小休止を増やして、大休止も短くし立ったままという時もあります。

もし、初めての富士登山で、絶対に成功させたいというのなら、登山ガイドを頼むのもアリだと思います。恐らく、今までの登山歴などを伝えると、最適なペースで登ってくれると思います。それにただ登るだけではなく、色々な富士山トリビアなども話してくれて、飽きずに登れると思います。僕も何気なく、ガイド登山の後ろにくっ付いて、その話しを聞いたりして、ヘエ、ヘエしていますwww

トイレについて

山小屋が空いている時は、山小屋のトイレを有料で貸してくれます。山小屋は御殿場口を除けば、そこそこあるので、女性でも安心だと思います。値段は通常200円、山頂は300円程度です。なので小銭を多めに持って行くことをお勧めします。

山小屋が空いていない時は、、、普通の山ならちょっと登山道から外れて、なんてことも出来ます。しかし、富士山で登山道を外れるのは危険です。自分が滑落する危険だけではなく、石を落としてしまう危険もあります。でも、それ以上に隠れる場所なんてほとんど無いので、周りから丸見えになります。

僕の場合は、やはり山小屋が開いていない時に登ることがが多いので、トイレが使用できません。しかし、何故か、スタート時に五合目(のトイレは使えます)で済ませておけば下山するまでトイレに行きません。汗を大量にかいているので、そのせいなのかな? とも思いますが、我が身ながら謎です。

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