【雑記】山の中の地形図制作の現場を生で体験したお話《測量編》

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前回《準備編》(以下にリンク)の続きです。

目次

測量

前章までで、いくつかの基準点の設置と、それが遠くからでも確認できるように目印を付けました。ここからやっと測量が始まります(もう少し準備が必要ですが・・・)。

測量で使う道具

作業の解説に入る前に、簡単に測量に使う道具を説明します。まずは街の中でもよく見る、黄色い三脚(必ずしも黄色ではないが、何故か黄色が多い)とその上に乗っている機械で、これを『トータルステーション』と言います。超簡単に説明すると、レーザー(厳密にはレーザーではないかもしれませんが、ここではイメージしやすくレーザーと称します)を飛ばし、反射させて距離を測る機械です。同時に角度も記録されます。

そして、その飛ばしたレーザーを反射させるためのものも必要です(厳密に言うとこれから説明する反射させるものが無くても計測できます)。これも街の中で見られますが、トータルステーションを覗いている目線の先に、定規のお化けのようなものを持っている人がいます。通常は黄色いものですが、白と赤のもあるようです。それは文字どおり定規のお化けなので、目盛(通常はセンチ単位)が打ってあります。地面に着くところが0センチで上に向かって数が大きくなっていきます。長さは30センチ程度のものもあれば、釣り竿のように伸びて数メートの長さになるものもあります。測量する場所によって使い分けます。この定規のお化けを『スタッフ』と言います、また、同じレーザーを反射させるもので、正式名称は知りませんが、現場では『ミラー』と呼んでいたものがあります。もしかしたら、障害物の少ない街中ではこちらを使う方が多いかもしれません。これはミラーと言う名の通り、レーザーを反射させるものです。直径10センチ程度の半球状のものです。しかし、ミラーとは言うものの、実際にはプリズムのようになっていて、どの角度からレーザーを当てても、同じ角度にレーザーを反射します。つまりどの角度から覗いて見ても、自分の目が見えます。普通の鏡だと斜めから見れば、自分の顔は映りませんよね。

以上、レーザーを出すものと、それを反射させるもの、このふたつが、測量する際には必須の装備となります。その他にもいくつかありますが、それはその都度、説明します。

測量は基本的には3人1組で行います。

  1. スタッフ(レーザーを反射するもの)を持っている人
  2. トータルステーション(レーザーを出すもの)を操作する人
  3. トータルステーションの横で、補足情報をメモする人

の3人が必要です。1人が欠けている場合は2と3をひとりの人がやることもありますが、いちじるしく効率が悪くなります。

測量の準備

測量を始める前に、もうひと仕事あります。それはトータルステーションを基準点の上の立てることです。なんだそんなことかと思うでしょうが、これが慣れないと意外に大変なんですよ。街中で見る測量風景の中に何気なく立っている黄色い三脚も、ただ突っ立っているだけではないんですよね。

まず、三脚を立てます。この三脚は、カメラやビデオの三脚に似ていますが、実は似て非なるものです。カメラの三脚の地面に接地するところは、通常は滑り止めのゴムになっていることが多いですよね。一方、測量用の三脚は先が金属でとんがっています。そして、先端から20〜30センチ上部に足を乗せられるステップが付いています。これは何のために付いているのかと言うと(これからの説明は山岳地帯の地面が不安定な土の上に設置する場合の説明です)、とんがった三脚の脚を地面に突き刺す時に、これに乗って体重を掛けるときに使います。2度、3度とステップを踏みしめて、これでもかっ! ていうくらい強く地面に突き刺します。では、実際に三脚を立てる手順に沿って詳しく説明します(あくまで、僕が教わった方法です)。

まずは、三脚の脚を広げて、その中心が基準点の真上に来るように地面の上に置きます(まだ仮です)。その際、三脚の脚はしっかりと開いておきます。とは言うものの、場所は山の中なので、当然地面は斜めっています。斜めといっても、恐らく皆さんのほとんどの想像の上をいっていると思います。たしかに普通に2本の足で立てるところもあります。しかし、場所によっては、木に抱きつくようにして身体を支えなくてはならなかったり、地面に座り込んで、手を付いて身体を支えなくてはならなかったりと、とんでもない斜面に三脚を設置しなくてなりません。普通に三脚の脚を伸ばして立てようとすると、それはあっいと言う間に谷底に転げ落ちてしまいます。そうならないように、山側(斜面の高い方)の三脚の脚は短めにして、谷側(斜面の低い方)は長めにすることで、三脚が倒れないようにします。でもこれだけだとまだ不安定なので、先程のステップの登場です。おもむろにそのステップに足をのせて、全体重を掛けるようにして、三脚の脚の先を地面に突き刺します。さらに2度、3度とステップを踏み付けて、しっかりと地面に固定します。三脚の上には重さのある機械(トータルステーション)を乗せるので、三脚をしっかりと固定しなくては、簡単に倒れてしまいます。街中でも倒れたら大惨事(トータルステーションはとても高価)なのですから、山の中で倒して谷底に転げ落としてしまったら・・・後はご想像にお任せします。

三脚の脚がしっかり固定出来たら、上部がある程度水平になるように、再び脚の長さを調整します。三脚が立ったら、次はその上にトータルステーションを乗せます。三脚とトータルステーションは一本のネジで固定します。カメラの三脚と雲台を接続するのをイメージしてください。構造は少し違いますが、三脚の中心部にネジがあるのは同じです。ただし測量用の三脚のネジは中空になっています。分かりやすく言うと、チクワのようになっています。そのチクワの外側の焦げている部分にネジが切ってあります。そのチクワ(ネジ)を三脚の下から上に乗っているトータルステーションの下部中心部にあるネジ穴に差し込み回転させてしっかり固定します。固定されたら、もう一度三脚のステップを踏み付けます。その状態ではまだトータルステーションの水平がとれていません。それに、正確に基準点の上部にトータルステーションの中心部に来てもいません。なので、まずは水平をとります。これの構造を文章で説明するのは僕の文章力では無理なので、簡単な説明になってしまいます。ご了承ください。トータルステーションの下部には比較的簡単(もちろんコツはいります)に水平を出せる装置が付いています。その装置とそこに付いている水準器を駆使してトータルステーションを正確に水平にします。水平になったら、今度は正確にトータルステーションの中心が基準点の上部に来るようにします。これもトータルステーション下部にある水平を出す装置を使います。この装置は水平を調節するだけではなく、ある程度水平に移動させることもできます。ではどうやって中心を確認するのか? そこで先程のチクワの中空が意味を持ってきます。トータルステーションは測量するための接眼部(正式名称は知りません。カメラで言うところのファインダーです)の他に横っちょにもうひとつ、小さな接眼部があります。そこを覗くとトータルステーションの中心部の真下が見えます。チクワのネジが中空になっているのは中心部の真下を見るようにするためです。そこを覗くと中心部に十字があります。その十字の中心部を基準点の中心に合わせます。これで正確に基準点の真上にトータルステーションを設置することが出来ました。設置が完了したら、トータルステーションの横に付いている目印(恐らくレンズの中心位置)から基準点の頭までの高さ(機械高)をコンベックス(巻尺)で測ります。これはアナログなんですね。ここもレーザーで測れれば良いのに、と思ったのは僕だけではありませんよね。でも、たまたま僕が使っていた機種が出来なかっただけなのか? はたまた最新の機種では出来るようになっているのか? は分かりません。

実測

ふぅ〜、これでやっと測量の準備が出来ました。ここからがやっと測量作業に入ります。ここからの説明は基準点の説明にあった画像を例にして説明します。まずは、基準点Aにトータルステーションを立てます。そして、a1にスタッフを持った人が立ちます。スタッフを持った人が注意することは、基準点の中心部に垂直に立てる必要があります。斜めになっていると正確に基準点の計測ができません。なのでスタッフには水準器が付いています。それを見ながら垂直を出します。そして、メモリが付いている面(レーザーを反射させる面)を基準点Aに向けて、計測されるのを待ちます。

スタッフの準備が出来たら、基準点Aにいる人はトータルステーションの接眼部を覗いて基準点a1を見ます。トータルステーションは水平に360度回り、また、上下には限界はありますが視線は動かせます。なので視線はある程度自由に動かせますが、真下や真上は見ることは出来ません。

トータルステーションの接眼部を覗くと、カメラで言うと望遠レンズで覗いたように、遠くのものがはっきり見えます。ズーム機能はありませんがピントは合わせられます。ただし、カメラと違って周辺部はかなり滲んでいます。カメラ小僧の感覚だと不良品です。しかし、使うのは中心部だけで周辺部は必要ないのでこれで正常です。しかし、異常に明るいです。大口径レンズには見えないのに、なんでこんなに明るいかは謎です。また、接眼部を覗くと、カメラの一眼レフやミラーレスのような色んな情報が表示されていると思いきや、特に何もありませんに基本的に十字があるだけです。その十字をスタッフの任意の高さの数字に合わせてを計測します。また、その数字も同時に記録します。これで、正確に基準点を計測出来ました。スタッフを立てるのは、直接地面にある基準点を計測する(見る)ことは出来ないので、その真上を計測して、そこから高さを引くことによって、正確に基準点の文字通り『点』の位置を計測出来ます。計測は一度だけではありません。通常複数回行われます。恐らく複数回計測して平均値を取ることで精度を上げているのだと思います。また、複数回計測すると言いましたが、その時、ただ単純に複数回計測するではなく、計測するたびにトータルステーションを回転させます。トータルステーションは水平にも垂直にも回転出来るので一定の条件(細かなルールは忘れてしまいました)で回転させて、複数回計測します。これは、恐らくトータルステーションの内部には複数の歯車があると思うので、その歯車の遊びを考慮してのことだと思います。つまり、同じところを複数回、いろんな条件で計測することにより、測量の精度を上げているのだと思います。山の中とはいえ、相当の精度で測量していることになります。しかし、この後、さらに精度を上げることをしています。

赤い大きな点はコンクリート杭、ピンクの小さな点は木杭

まずは、基準点Aからa1を(複数回)測量しました。それが終わると、トータルステーションをa1に移動させます。その時、三脚の上に乗っていたトータルステーションは一度、三脚から外して専用のハードケースに収めます。そのうえでa1に移動させます。わずか数メートルの移動でも、決して三脚の上にトータルステーションを乗せたまま三脚を持ち上げて移動させることはしません。頭が重いので不安定になるからだと思います。そして、移動後、再び三脚の設置からやり直します。a1に設置が出来たら、今度は振り向いて、基準点Aを再び測量します。つまり、こっち側からと向こう側から測量して更に精度を上げています。基準点Aが測量出来たら、再び振り返り、今度はa2を測量します。そうやって上記図3のように基準点をどんどん増やして測量します。

1回測量が終わる毎に、一度トータルステーションをバラして(三脚から下ろして)、移動して、再び三脚を組み立てて、トータルステーションをセットして、測量して・・・の繰り返しです。これを遺跡の広さ分行います。正直言って、最初知られていた遺跡の広さはそれほどでもなく、これなら、二ヶ月くらいで終わって、あとはいまだ未発見の金の発掘域の調査に時間を掛けられるんじゃね? って思っていたんですが、実際には当初思っていたよりはるかに山の上の方まで遺跡が広がっていることが分かり、結局は調査最終日の最後の最後まで測量をしていました。とは言うものの、遺跡の調査も合間合間に行っていて、複数の採掘場、複数のテラス、複数の遺物、複数の石碑、と、色々と発見がありました。まぁ、そのせいで、測量域が広がり、最終日まで測量をするハメになったんですけどねー。

肉付け

今までは人間で言うと、骨格の部分になります。イメージでいうと上部にある図3です。これからはそれに肉付けをしていきます。分かりやすくイメージできるように言うと、今までは平面の地図でしたが、これからは立体に見えるように、地図に等高線を書き込むための作業になります。この作業を行うことにより、一気に我々が見慣れた地形図に近づきます。

測量そのものの作業は今までとあまり変わりません。しかし、大きく違うのは、今までは基準点と基準点の間を測量していましたが、これからは、基準点から地形の変化する点を拾っていくように測量していきます。

トータルステーションは今まで測量した基準点に立てます。これは今までと同じです。今までの測量で、各基準点の位置は分かっているので、そこから見て、沢の縁とか、尾根が立ち上がっている場所、(見えれば)尾根の上の稜線上の点、などをひとつひとつ丁寧に測量していきます。この測量している点を測量士さんは『変化点』と呼んでいました。この変化点には杭を打たずに、スタッフを地面に直接立てて測量していきます。実はこの作業が1番時間が掛かります。なぜなら、この方法で測量した変化点は数千箇所になるからです。その点をコンピュータに入れると、それぞれの点を繋いでくれ、等高線として出力してくれます。それが下にある図3-1です。なので、この点をたくさん測量すればするほど、正確な地形図になりますが、そのかわり、膨大な時間が掛かるようになるので、質と作業時間のせめぎ合いになりますね。

テラスの測量

夏の盛に始まった測量作業は、気が付くと辺りはすっかり紅葉の盛りを過ぎていました。

地形図の等高線を書くための測量がほぼ終わると、次は遺跡のテラス群を書き込むための測量が始まります。これは今までの作業に比べると楽な部類の作業になります。と言うのも、テラスってほぼ平らなんですよね。斜面じゃないというだけでも随分と違います。だって、谷底に転げ落ちる心配をしなくていいんですから・・・。

テラスも基準点からの測量になります。ほとんどのテラスは不規則な形をしています。なので、その形に合わせて測量する点を取っていきます。この作業は数日で終わりました。

遺物の位置の記録

遺跡には遺物がゴロゴロ落ちています。と言っても、そのほとんどは石臼です。金が含まれた岩を細かく砕く(すり潰す)のに使います。遺物の9割はこの石臼ですが、そのほかには石碑、石塔などもあります。広さから考えると、ここにはそれなりの人数の人が暮らしていたと思われますが、人が生活していたことを思わせるような遺物はありませんでした。

遺物の記録もトータルステーションを使います。ここでもやはり基準点にトータルステーションを設置して遺物の中心を測量します。石臼は大概丸いので、直径は手動で測り、記録します。

ここで、図を見ながらもう一度、今までの流れをおさらいします。

【肉付け】

骨格(図3)が出来たら、次は各基準点から「変化点」を観測して等高線をおこしていきます。

この画像の等高線は破綻しています。あくまで例ということで・・・。

【テラスの測量】

緑の線がテラスになります。ここも基準点にトータルステーションを立てて、形をトレースしていきます。

【遺物の位置の記録】

グレーの点が遺物です。無数に転がっているものにひとつづつ管理番号を付けて、位置、大きさ、形を記録します。

この作業が終わる頃には、現場に雪が降りました。

石臼は僕たちが初めてここに来た時から、あちこちに落ちていましたが、測量作業中にもたくさん見つけました。最終的には100点を越えていたようです。

この石臼は最終的には担いで下ろしました。もちろん背負えること、そしてそのまま山を下りてこられると言う条件が付きます。小さいものなら一度に2つとか担げますが、中には担ぐことさえ出来ないほどの大きさの石臼もあります。数人掛かりで担いではみたものの、一歩たりとも動けませんでした。

ちなみに今回のクライアントさんは某博物館なので、担ぎ下ろした遺物はそこに運びました。僕たちが苦労して下ろした遺物は、現在その博物館に展示されています。

目視で微調整

地形図はかなり形になってきました。素人目には、もうこれでいいんじゃね? と思います。しかし、まだやることはあります。初めの方で書いたと思いますが、今回作る地形図は500分の1の地形図です。そのくらい詳細な地形図になると、書き込まれる情報も多いです。細い沢の形、大岩、目印になるような大木、このようなものも書き込んでいきます。

そして、ついに最終行程の一つ前(これは僕が実際に経験したことではなく聞いた話です)。出来た地形図片手に、実際の地形を目で見て微調整していきます。この辺の作業は素人には無理です。プロの測量士さんが行いました。

ついに最後の作業です(これも素人には無理です)。国土地理院の地図に、今回作成した地形図を埋め込んでいきます。と言っても、実際に国土地理院の地図を改変するわけではないです。今回作業して出来た地形図の縁を国土地理院の地図に滑らかにつながるように修正していきます。

実際にはこれ以外の作業もあるとは思います。しかし、これが僕が知っている全作業です。


夏の真っ盛りに始まった作業は、あと数日で年を越す季節になっていました。色んなこと、本当に色んなことがありましたが、終わってみれば、とても貴重な体験が出来たと思います。今回、このような経験する機会が与えられたことに感謝です。そして、何より、全くの素人の僕に、根気よく教えてくれた測量士さんの皆さん、本当にありがとうございました。

最後に・・・このお仕事を通して山登りに役立っていること

これらの一連の作業を終えて、僕はとても貴重な経験が出来たと思っています。と同時に、測量と言うお仕事がとんでもなくすごい事をやっているんだと言うことを知りました。

と同時に、毎日のようにハードな山登りをしていたのですから、それなりにその後の僕自身の山登りに何らかの影響があると思います。そこで、僕自身が気づいたことを書いてみたいと思います。あくまで、個人的な感想ですが・・・。

読図

まぁ、地形図を作っているんですからね、それなりにこの能力はレベルアップするでしょう。 

前述の通り、僕らは測量以外で遺跡の調査もそのお仕事のひとつでした。その際、ただ闇雲に山の中を歩き回ることもあれば、責任者から、ここを確認してきて、と言って手書きの地形図を渡されることもあります。現場には道なんかはありません。踏み跡や、獣道さえも無いような場所なので、手渡された地形図を見ながら、どのコースを辿れば目的地に着くのか? 地形図を読み解かなくてはなりません。また、踏査のためにまだ未確認の山域に入った時は、簡単ではありますが、これも手書きの地形図を書いて、どんなところだったかを説明する必要があります。つまり、地形図の読み書きは最低限のリテラシーと言うことになります。

こんなことを半年近くやっていたのですから、否が応でもこの能力はレベルアップしますよね。

下山

実は僕はこの時まで、下りが苦手でした。登りでコースタイムの2倍の時間が掛かることは稀ですが、下山では2倍以上の時間が掛かることも珍しくありませんでした。それが、この調査の後は、まぁ、単純に筋力が付いた、とか体幹が鍛えられた、ということもあるのかもしれませんが、始終不安定な場所にいて、登ったり下ったりをしているので、バランスを取る能力が上がったのだと思います。

山でコケたりスベったりするのは、バランスを崩すことによって引き起こされる事故だと思います。なので、バランスが鍛えられたことにより、下山が苦でなくなったばかりではなく、楽しくなりました。

これも、自分がレベルアップしたことのひとつです。

ラク!

これに関しては、別記事で詳しく書く予定ですので、ここでは簡単に説明します。

登山中に落石を見た時などに、他の人に伝えるために大声で、

「ラークッ!」 

と叫びますが、一般登山道ではこれを聞くことも、言うことも稀ですが、コースによっては、結構頻繁に聞かれたりします。

今回の現場でも、急斜面の登り下りが頻繁にあります。しかも、通常は数人でゾロゾロと行動するので、上にいる人が落石を起こしてしまうことが頻繁にありました。もちろん、わざとではなくて、そもそもが浮石だらけの急斜面なので、どんなに注意して歩いていても、石を蹴ってしまいます。その際には下の人に伝えるためにこの言葉を多用します。1日で何度も叫ぶこともあります。一度は拳くらいの大きさの石が顔のすぐそばを通っていったこともありました。

ここまで読んで、ん? これってなんか関係あるのか? と思うかもしれません。でも、あるんです。

この「ラク!」と叫ぶのは、山登りをする人なら、大抵その意味を理解していると思います。しかし、これって、言い慣れていないと、咄嗟には叫べないんですよね。慣れないと、どうしても一拍おいてから叫ぶことになります。もしかしたら、この一拍が生死を分けるかもしれません。

また、大抵の場合、初めてこの言葉を叫ぶ時は、他の人が叫んでいるの時に、それに呼応するように叫ぶことが多いでしょう。もし、自分が1番最初に落石を発見した時に、誰よりも先にこの言葉を叫べる人はかなり少数派だと思います。なぜか? 単純に言い慣れていないし、そもそも、どの瞬間に叫ぶのか知らないからだと思います。

そういう意味でも、この調査時にこの言葉を多用したことは僕にとってはとても良い訓練になったと思います。なので、その後の山でも咄嗟にこの言葉を出すことができました。まぁ、滅多に言う言葉では無いですが、いざという時、使えるのと使えないのではだいぶ違うでしょう。


以上が、僕の測量体験でした。今回は測量にフォーカスしていますが、実はもうひとつのお仕事の遺跡の調査の方は、今回はあまり触れていません。こっちも、楽しい事がいっぱいあったので、色々と書きたいんですが、前述した大人の事情によりあまり口外できません。僕が忘れてしまう前になんとか形にしたいけど、いつか書ける日が来るのでしょうかねー?

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