これからお話することは実際に僕が登山中に体験した実話です。また、話の中で「異世界」だとか「世界線」などという言葉が出てきますが、僕自身は厨二病ということはありません。厨二病は中学2年で卒業しましたので・・・。
それは約6年前の梅雨の合間の晴れた日のことでした。
その頃の僕は体調をくずしていました。とは言うもののもうだいぶ回復していて、軽い山登り程度なら問題なく行える程度なので、本格登山を前にリハビリ登山と称して近くにある低山に登ることにしました。そこは過去に何度か歩いているコースです。勝手知ったる、というほどではないものの、初めてのコースでもないので、それほど緊張もなく、病み上がりの割には身体も軽く感じ、気持ちの良い山歩きを楽しんでいました。
最初の山頂に着き、いつものようにカップ麺の昼食を摂ります。短い休憩のあと、次の山頂に向かいます。と言っても、尾根伝いに軽く下って登る程度で、のんびり歩いて20分ほどの距離です。
本日2つ目の山頂に到着。山頂には誰もいなく、展望を独り占めに出来ました。というか今日はここまで人の姿は見ていません。低山でアクセスもそう悪くないので、いつもは数組の登山者の姿を見るのですが、今日はまだゼロです。まぁ、そんな日もあるよね。程度に思っていました。
山頂には5分ほど滞在して下山を開始します。いつもなら来た道をそのまま戻りますが、今日は気分も調子も良いので、山の裏側を通る林道に出て、山の麓をグルっと半周して元に戻るつもりです。
下山を開始してすぐ、一人のハイカーさんとすれ違いました。この人とは会話をすることもなく、軽く挨拶をするだけでした。第一村人ならぬ、第一ハイカーさんですね。
林道に出るルートは、登ってきたルートと違い、アクセスも悪く、急な階段があったりと、いまいち人気の無いルートです。それに季節によっては草が自分の背丈より伸びて、軽い藪漕ぎ状態になることもあります。そんなわけで、いままで何度か歩いたことはありますが、人に会ったことはありませんでした。まぁ、今日もここまで一人にしか会っていないので、この先のルートで人に会うことはないだろうと思っていました。
しかし・・・。
急な階段を下り終えた頃、人の声が聞こえてきました。その声はだんだん大きくなってきます。どうやらグループ登山の人たちで、会話で盛り上がっているようです。僕は林道から登って来る人がいるのだと思うのと同時に、このルートを登りで使う人もいるんだなぁ、と感心していました。
そして、角を曲がったところで鉢合わせしました。向こうは4〜5人の高齢者のグループで、男性が1人、その他は女性でした。通常、登山者同士なら挨拶を交わすなり、ちょっとした会話をしたりします。しかし、今日はそのどちらでもありませんでした。グループのリーダ格であろうと思われる男性が、僕の顔を見るなり
「ヒルかと思った」
と言ったのです。耳を疑う、という言葉がありますが、まさにその状態です。どう考えても聞き間違いではありません。彼は間違いなく、
「ヒルかと思った」
と言ったのでした。そして、そのまますれ違い、再びガヤガヤと遠ざかっていきました。
僕はその場でしばらくの間ただボーゼンと立ち尽くすことしか出来ませんでした。
ん? どういうこと? ヒル? 僕が?
僕は生まれてこの方、当たり前ですがただの一度もヒルに間違えられたことはありません。いや、ほとんどの人類はそんな経験は無いと思います。そもそも、サイズが違いすぎますよね。
ヒルを知らない人はいないと思いますが、以前、、YouTubeにヒル動画をアップしているので、リンクを貼っておきます。
見間違えます? フツー? いやいやいや、おそらくただの冗談でしょう。そもそも、人間と虫を見間違えるなことなんてないでしょう? そうだ、そうに違いない。冗談、冗談だったんだ、と自分に言い聞かせて、僕は再び歩きはじめました。
山の裏側の林道に出ました。あとは舗装路伝いに山をグルッと回って駐車場に戻るだけです。とりあえず、登山道を抜けて安全地帯に入ったので、ホッとしました。と同時にどうしても先程の
「ヒルかと思った」
が引っ掛かっています。心の中のモヤモヤが消えません。どう考えても僕がヒルに見えるはずはありません。あれは冗談だったんだと自分に言い聞かせてみても、そもそも身長が170cmもあるヒルがいるはずがないじゃないですか! 仮に冗談だったとしても、初対面の人に向かって
「ヒルかと思った」
なんて言います? 普通に考えれば失礼極まり無いですよね。山を愛する人にそんな人がいるとは信じたくないですが、もう、2度と会わないだろうからって、好き放題言っていいわけないじゃないですよね。彼の目には僕はどういう風に見えていたんでしょうか? もしかしたら本当に彼には僕が下の画像のように見えていたということでしょうか?
こんな生き物見たことありますか? 少なくても僕はありません。ここで僕はふと気がついたことがあります。
この生き物、現在の世界線では見ることが出来ませんが、もしかしたら先程の彼の世界線では実際に存在しているのかもしれません。つまり彼または彼らは異世界から来た人たちなのではないでしょうか? そんな彼らならこの世界線では存在することのない生物、仮に「ヒル人間」と名付けましょう。は結構身近な生き物なのかもしれません。彼らの森ではこの世界線では猿や鹿のように普通に存在する生き物なのかもしれません。いや、きっとそうなのでしょう。だから登山道上で僕とばったり出会ったとき、普段見慣れている「ヒル人間」に似ている僕を見て、
「ヒルかと思った」
と咄嗟に口に出したのかもしれません。うん、そうだ! そうに違いない! ふぅ〜、スッキリした。
あれ? でも、そもそも「ヒル人間」に似ている僕って何なのー!!!
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