この本の帯に『刻々と近づく「山が山でなくなる日」』とあった。ふとこれが目に止まって手に取りページをパラパラとめくってみたら冒頭に丹沢の大倉尾根の写真があった。始めは何の写真だか分からなかった。それと言うもの、尾根道を見上げているだろうその写真いっぱいに木の杭が乱立し、階段状にそれが上まで続いている。まるで映画で見るアメリカの墓地のようだ、墓標が見渡す限りに広がっているのだ。このとき、前述した「山が山でなくなる日」という意味を理解した。
著者である加藤氏も会社に通う傍ら山行しているサラリーマン登山家(?)で、基本的にはその加藤氏が山で見聞きした現在の山の問題をまとめた本です。自分も最近登った山で「山が山でなくなる」という問題を直視したわけだけど、そういった問題がまだ自分が登ったことが無い有名な山々でも起きていることを知り、ちょっとビックリした。たしかにたまにニュースで開発する側とそれを阻止する側の訴訟問題を目にするが、いままであまり気にしたことがなかった。確かに必要な開発もある、でもどう考えても必要の無い施設や道路の開発もあるような気がする。それによって山の自然が脅かされるのは問題なような気もするが、人間の欲求というのは果てしないので、現状で満足する、ということが出来ないのではないだろうか?
とにかく、この本は考えさせる内容ばかりだ。特に最近山登りを始めた自分には興味深い内容も多々あった。ただ、この本の初版は1994年なので、今から10年以上も前の話だ。これが書かれてから10年以上たった今、この本で書かれている問題はどうなっているんだろう?
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