【注意】この記事は2013年10月に行ったものです。新たにテストボトルを増やして2020年5月に保温・保冷テストを行っています。新しいテスト結果をご覧になりたい方はここをクリックして御覧ください。
旧山専ボトルと新山専ボトルを比べてみた
いまさら説明の必要も無いと思われるので、特に山専ボトル(メーカーは新ボトルに対しては『山専用ボトル』と呼んでいますが、通常私達山仲間では『山専ボトル』と呼んでいるのでそう表記します)については詳しい説明は他のサイトに任せることにします。そもそも、ググってここにたどり着いているということは散々その説明を読んでいると思われるので、端折って本題に入ります。
山をやられている方で山専ボトルを所持している人は多いと思います。ツアー登山などすると、その所持率の高さに驚くこともあります。なぜ、これだけ受けいられたかというと、思うに、山専ボトルというネーミング、シンプルな作り、そして、優れた保温・保冷性能にあると思います(まぁ、理由なんて人それぞれですけど・・・)。人に相談されたら、コレを買っておけば間違いないと自信を持って勧められます。そんな訳で私も旧山専ボトルは500mlと800mlの2本を所持してます。主に500mlは冬は温かい飲み物、夏は氷水などを入れて1年中使用しています。また800mlは釣り船など火を使えない場所で使用しています。
そんな中、山専ボトルがリニューアルするという話を聞いて、コレ以上何が変わるんだ? と疑問に思いました。と同時に、気になるのは山専ボトルで唯一不満のあったところが解消されているのか? ということ。そういったわけで、早速手に入れてテストしてみました。
旧山専ボトル
上述の通り旧山専ボトルは500mlと800mlの2本持っています。自分なりのザックリとした使い分けはすでに書いているので置いておいて、ここでは旧山専ボトルを使用していて気になったところを幾つか書きます。
まず、所持率の高さゆえに、ツアー登山時などは同じボトルがたくさん並ぶので、自分のボトルがわかりにくくなることがあります。シリコン製のボディリングは別売りで何色か用意されていますが、実際にアウトドアショップで売っているのを見かけたことはほとんどありません。なので、人と差別化するのはなかなか難しいと思います。手っ取り早く差別化をしたい場合はボディにステッカーやシールを張ることだと思うので、自分自身は今現在このボディに張るステッカーを選定中です。また、人によってはペイントをキレイに剥いで、ステンレス地を剥き出しにしている人もいるようです。私にはソレをやる勇気はないですが・・・。
次にこの旧山専ボトルで一番不満のあったところが、気密性の高さ故、中ぶたが開きにくくなることがありました。特に温かいものを入れて山頂でコーヒーなど飲んで、そこで中ぶたをギュッと閉めると、帰宅後に中ぶたが非常に固くなって開かなくなります。何故そのようなことが起きるのかは、想像ですが、外気圧に対してボトル内の気圧が低くなるため、中ぶたが内側に引っ張られる力が働き開きにくくなるのだと思います。特に熱いお湯を注いだ後はまだボトル内の温度は高くなってます。そこで中ぶたをギュッと閉めると、冷やされた空気は収縮するので、ボトル内の気圧が下がることになります。それと同時に、この山専ボトル故の問題で、物理的な標高差での気圧の違いが加わるためさらに大きな気圧の差が生まれます。富士山頂などの気圧は(夏で)大体600ヘクトパスカル台なので、そこで蓋をギュッと締めて、地上に戻るとボトル内と外側の気圧の差が約300〜400ヘクトパスカル位にもなります。それプラス中の空気が冷やされることによる気圧差も加わり、そうとうな気圧差になると思います。まぁ、そんだけ気圧差が生まれれば当たり前の現象ですね。逆に山専ボトルの気密性の高さが証明されたことにありますが・・・。
そこで、私の対策としては必ず中身を全て使いきり、中ぶたを半分空いた状態で外蓋をギュッと締めるようにしていました。さて、新しい山専ボトルではそこの問題は解消されているのでしょうかね・・・。そこで、実際に北アルプスにある標高約2,400メートルの奥又白池に新しい山専ボトルを持って行ってテストしてきました。その模様はこのページの下の方になる「フィールドテスト」という項目で詳しく書いています。
新山専ボトル
前置きが長くなってしまったけど、やっと本命の新型山専ボトルの紹介です。旧型との比較は後述するとして、基本的な構造は旧型とほとんど変わりません。ただし、実際に使用してみると確かに進化していると思いました。
旧型を使用している時にはデザインが嫌いだという声が多く聞かれましたが、デザインに関しては旧型をおもいっきり周到しています。これも好き嫌いが別れるところだと思いますが、個人的には不必要なものを全てそぎ落としたようなこのシンプルなデザインは嫌いではありません。なので、デザインが大きく変わらなかったのは良かったと思いますが、そもそもデザインにはあまりこだわりが無いので、全く違うデザインになったとしても、特に何も思わなかったと思いますが・・・。
まぁ、そんなことはどうでもいいですね。やはり、旧型を持っている人が一番気になる、今自分が持っているものと何が違うんだということだと思いますので、次項から新旧との比較をしていきます。
新旧山専ボトルの比較
まずは、新旧との重さの比較です。百聞は一見に如かず、下の表を見て下さい。言葉で説明するよりも数字を見てもらったほうが早いですよね・・・。ただし、新型の大きい方(900ml)は持っていないので、実測値はありません。基本的にはカタログ値、実測値共に新型のほうがごく僅かですが、軽くなっています。実際に持った感じだと新旧を同時に持たない限りはほとんど分からないレベルです。
旧800ml | 旧500ml | 新900ml | 新500ml | |
カタログ値 | 400g | 320g | 390g | 280g |
実測値 | 388.5g | 300.5g | — | 282.5g |
次に、新旧の一番の違いはこの中栓(写真左が旧型で右が新型)です。旧型はひとつのパーツだったのに対して、新型は「ダブルスクリューせん」と呼ばれ、2つのパーツになっています。カタログを見るとお手入れがしやすくなったことが謳われていますが、どう考えてもひとつのパーツの方がお手入れはしやすいと思うのは私だけでしょうか???
中栓を外してみました。新型は確かに2つのパーツから出来ています。個人的な意見ですが、やはりこの中栓の変更は上述したボトル内外の気圧の違いによる中栓が開かなくなる問題に対する解決策だと思うのは私だけでしょうか???
個人的に歓迎だったのは、微妙ですが、外蓋が大きくなっています。個人的に、この蓋をコップ代わりに使うことが多々あるので、この容量アップは良かったと思います。
ここでちょっと、変な実験をしてみます。この記事を書くためにボトルを撮影している特にふと思ったんですが、新型と旧型の中栓って互換性はないのか???
というわけで、中栓を交換してみました。実際に液体を入れてテストしたわけではないのですが、互換性はあるように思いました。栓もしっかりと閉まるので、行けそうですが、メーカーは決して認めないでしょう・・・ね。
でも、中栓を交換した状態だと、旧型は外蓋は閉まらなくなります。
じゃぁ、外蓋も交換しちゃえ! ってことでやってみたら、素直に蓋が閉まりました。コレもやっぱりメーカーは認めないだろうな・・・。
ちなみにシリコン製のリング(写真の黄色いパーツ)も互換性があります。これはさすがにメーカーも首を縦に降るんじゃないか・・・。
保温テスト
次に、恐らく一番知りたいことは、保温性能の方はどうなったんだ??? ということでしょう。なので、自分が持っている山専ボトルを使用してテストしてみました。まずは以下にある保温性能のカタログ値を見てください。
経過時間 | 旧800ml | 旧500ml | 新900ml | 新500ml |
6時間 | 79度以上 | 76度以上 | 80度以上 | 77度以上 |
24時間 | 57度以上 | 49度以上 | 60度以上 | 50度以上 |
そして、以下が実際のテスト結果です。3時間毎の計測時以外はベランダに放置しておきました。たまたま、テストした日(10月5日)は24時間ほとんど気温が変わらない特異な日でしたが、逆に安定したテストになったと思う反面、もっと気温が低い時にもテストしたみたいですね。機会があれば・・・ですが・・・。この表を見る限りではカタログ値に偽りは無さそうです。
計測時刻 | 気温 | 旧800ml | 旧500ml | 新500ml |
09:00 | 20.0 | 95 | 95 | 95 |
12:00 | 21.5 | 89 | 88 | 87 |
15:00 | 21.6 | 85 | 81 | 81 |
18:00 | 21.2 | 80 | 76 | 76 |
21:00 | 21.4 | 76 | 70 | 71 |
24:00 | 21.3 | 72 | 62 | 66 |
03:00 | 21.5 | 69 | 65 | 63 |
06:00 | 21.2 | 67 | 59 | 59 |
09:00 | 23.8 | 64 | 56 | 56 |
グラフにもしてみましたが、上の表の方がよくわかりますね・・・。特に新型と旧型の違いがほとんど無いのにはビックリです。旧型はもう6年くらい使っているので、性能も落ちていると思っていましたが、結果はご覧の通りです。この辺の頑丈さも山専ボトルということでしょうか・・・。
基本的な保温性能がほとんど変わらないならば、旧型になって安く売られている旧山専ボトルを購入するのも手かもしれませんね。バリバリ高所で使用する方には新型をお勧めするけど、ハイキング程度ならば、旧山専ボトルでも十分かも・・・。
フィールドテスト
最後に、実際に高所(北アルプスの奥又白池)に持って行ってテストしてみました。徳沢であっついお湯を入れてスタートして、標高約2,400メートルの奥又白池でお湯を使用して、中が冷めない内に中栓を思いっきりギューーーっと締めて、家(標高約100メートル)に帰って蓋を取ってみたら、なんの抵抗もなく開けることが出来ました。ただし、炭酸のペットボトルを開けるときのようなプシューっという音がしましたが・・・。やはり、この2重の中栓は気圧の違いによる蓋が開かなくなることへの対策だったんですね・・・きっと・・・。
以上、簡単ですが新旧山専ボトルを比較してみました。機会があればもっと外気温の低い時にもテストしてみたいですね。また、逆に保温テストだけではなく、保冷テストもしてみたいですね。またまた、新バージョンからは専用のカバーも出ているので、ソレを装着してのテストもしてみたいけど、時間とお金が・・・。
と、言うわけでもう少し寒い時期にテストしてみました。
山用テルモス(魔法瓶)の保温テストをしてみた