オピネルナイフ。
アウトドア系の人なら、おそらくその名前くらいは聞いたことがあると思います。また、持っている人も多いのではないでしょうか。
今回はそのオピネルナイフを5年以上もオイルに浸けた時のお話をしたいと思います。
何でオイルに浸けるの?
そもそも、何でオピネルナイフの柄の部分をオイルに浸けるのか? と言う疑問ですが、僕自身あまりよく分かっていません。ネットでオピネルナイフをググると、購入後の必須の儀式のごとく、多くの方がやっているので、僕も初めてのオピネルナイフを買った時は皆にならってしまいました。
一説によると、このナイフの構造上(木製の柄の部分にナイフの刃が収納される)、柄が水分を吸ってしまうと、ナイフの出し入れがしにくくなるので、それを防止するため、柄の部分をオイルに浸けて、水分を弾き、浸透を防ぐために行う。らしいです。
僕もそれを信じて、初めてオピネルナイフを買った時にはその儀式を粛々と行いました。
僕が持っているオピネルナイフ
まず、僕が持っているオピネルナイフを紹介します。購入順です。
- No.8 カーボン刃(2015年7月31日購入)
- No.10 カーボン刃(2015年8月22日購入)
- No.8 ステンレス刃(2016年7月29日購入)
- No.6 カーボン刃(2019年2月23日購入)
1番目のモデルは、おそらくもっとも人気のあるモデルだと思います。なので、最初に買ったのが、このモデルです。このオピネルはカーボン刃(炭素鋼)とステンレス刃があります。その違いはザックリ言うと、カーボン刃はすぐに錆びます。濡れたまま放って置くと、翌日にはサビサビになっていたりします。でも、研ぎやすいという特徴もあります。逆にステンレス刃は錆びません(厳密には錆びにくいです)。なので、使用に際してそれほど気を使わなくて済みます。しかし、刃先が欠けたりした場合は研ぎ直すのはかなり苦労します。まぁ、どちらの方が良いとは一概には言えませんが、どのようにナイフと付き合っていくかによって選択するのだと思います。
2番目のモデルが今回の主役です。なので、詳細は後述します。
3番目はステンレス刃のモデルです。気軽に扱えるモデルも欲しいな〜、と思い購入しました。
4番目はカーボン刃です。これは黒錆加工していません。
僕が持っているオピネルナイフは以上の4本です。以前にもこのブログで山で使うナイフについて書いていますが、かなり古く、現在の僕の山ナイフ感とははかなりズレが出て来ているので、いづれ新しく書き直そうと思っています。なので、今回は主役のナイフ以外はあまり詳しく触れません。
何で5年も浸けたの?
相変わらず前置きが長かったですが、ここからが本題です。そもそも僕はオピネルナイフのNo.8を持っているのに、何でこのナイフ(No.10)を買ったのかってことですよね。しかも、No.8を買ってからまだひと月も経っていないのに。
それは決してNo.8が気に入らなかったってことでは無いです。むしろ、とても気に入っていました。気に入っていたからこそ、このNo.10を購入することになりました。どういうことかと言うと、このNo.10には何かのキャンペーンでケースが付いていたのです。僕はナイフ本体より、このケースが欲しくてNo.10を購入したのです。
先程からNo.8とかNo.10とか書いていますが、オピネルナイフ(Tradition)はNo.6からNo.12まで6種類のナイフがあります。番号がナイフの大きさを意味し、番号が大きいほどサイズが大きくなります。
なので、ナイフ本体はすぐに使用する予定は無かったので、とりあえず黒錆加工(詳細は後述)をして、オイルに浸けてから保管しておこう、ということだったと思います。
No.8は一晩浸けたので、No.10は何を考えたか1週間浸けてみよう。という風に考えてしまいました。
結果、ここから長い長いオイル浸けが始まった訳です。
長けりゃ良いと言うわけではないことは理解しているつもりです。だったら何故5年以上もオイルに浸けておいたのか? 単純にオイルに浸けてから1週間後、用事が入り、オイルから取り出すことが出来なかったのです。まぁ、来週やればいいや、と先延ばしにし、それが数週間続いた後、僕はすっかり浸けたおいたことを忘れてしまいました。置いていた場所も悪かったのです。書棚の脇にジップロックに入れてぶら下げて置いたのですが、そこは陰になっているところで、普段の生活の中ではほぼ目に入ることはありません。たまに掃除などで、その存在を思い出すことはありましたが、まぁ、今度やればいいや、とさらに先延ばしにし、それが繰り返され、気が付いたら5年以上の時間が経ってしまった。というのが、結果、5年以上もオイルに浸けてしまった理由です。
いやはや、時間が経つのは早いもんですね。
開封
5年以上浸けたと言っていますが、浸け始めたのが2015年の夏ですので、実際には6年以上が経っています。もう、こうなったら5年だろうと、6年だろうとそう変わりませんよね。
んで、昨年から始めたプチ断捨離の一環で、今回はついにオイルからサルベージすることにしました。こんなものいつまでもぶら下げでいても汚らしいだけですからね。
まずはジップロックの外から触ってみます。かなり反発力のあるゴムのような感触です。確か浸けたオイルはサラサラな胡桃オイルだったと記憶しています。なので、最初はもっとプニプニしていたはずです。
う〜ん、開けるのが怖くなってきた。
でも、勇気を出して、ゆっくりとジップロックの口を開く・・・うわっ! 腐った油の匂いが立ち上がって来た。
オイルがこぼれないように口を大きく開き、ナイフの刃に触れてみた。6年振りのヒヤリとした感触が伝わってきた。
ん?
僕はそっとジップロックの底を摘んで、そのままゆっくりひっくり返してみる。普通なら、オイルと共にナイフが落ちてくるはずだけど、オイルは溢れないし、ナイフも落ちてこない。次に意を決して、オイルの部分を触ってみる。もはや、液体感は全く無く、指で押して凹んだオイルはその反発力ですぐに元に戻ってしまう。だったら、そのままナイフの刃を掴んで引っ張り出したら、ナイフに付いたオイルの塊が付いてくるんじゃね? と戻ったけど、そんな簡単な話ではなかった。オイル、ナイフ、ジップロックが完全にくっついていて、ナイフを引っ張り出すことさえ簡単にはいきそうもない。もはや、分子レベルで融合しているんじゃね? と思うくらい完全にくっついている。
う〜む、このままじゃ埒があかないな。
僕は油が飛び散ってもいいように、浴室に移動した。まずは、ジップロックを引き離す。穴が開こうが、破れようが知ったこっちゃない。無理矢理引っ剥がして、なんとかナイフを取り出した。と言っても、ナイフにはまだオイルの塊がくっついている。
オイルの塊を素手でむんずと掴み引き剥がしていく。しかし、そう簡単にはナイフから離れてくれない。先程はオイルはゴムのようだ。と言ったけど、どちらかと言うと、固い水飴のようになっている。それが、完全にナイフの柄を咥え込んでいて、簡単には離してくれない。僕は仕方なく爪を立ててナイフの柄からオイルをこそげ落としていく。
少しづつオイルがナイフから離れていく。10分ほど格闘してついに柄の全体が露出した。しかし、ナイフは全体的にオイルでヌルヌルしている。試しに刃を閉じたり開いたりしてみる。意外に軽い力で開閉出来た。まぁ、油でヌルヌルしているので、当然と言えば当然なのかもしれない。
ふう〜、なんとかナイフを取り出すことは出来たけど、こんなにヌルヌルしていたら使いもんにはならないぞ。どうしたもんかな〜?
ここまでの写真がほとんど無いのは、手がオイルでベトベトしていてカメラもスマホも触れなかったです。って言う理由と、そもそも今回の事を記事にすることは考えていなかったので、写真もあんまり撮ってなかったんですよね。なので今回は全体的に写真は少な目になっています。
油洗浄(一般の石鹸)
とりあえず、石鹸で洗ってみた。あの白い四角いヤツだ。かぐや姫の『神田川』でカタカタ鳴っていたアレだ。
たくさん泡立てて、柄をこする。ヌルヌルが無くなってきたなって思ったら泡を落としてみる。一瞬、あっ! (オイルが)落ちた? って思ったけど、柄の部分をしごくとオイルがジワ〜っと浮き出てくる。10回くらい繰り返したけど、同じことが繰り返されるだけで、オイルが無くなる気配は無い。腐ったオイルの臭いも一向に消えない。
う〜ん、やっぱりもう使えないかな〜?
とりあえず、その日はそこでギブアップして、そのまま放置。
もう廃棄するしかないのかな〜。
数日放置。
ナイフは素手で触るのを躊躇するくらいヌルヌル、ベトベトしている。
数日後、ふとした時、あることに気がついた。
そう言えば、テレビで、台所の換気扇に付いた油汚れをスプレーの泡で包み込んで落とすCMを思い出した。油汚れにスプレーして、そのまま数分放置しておくと、油がダラーっと流れてきて、あとは雑巾で拭くと一発で綺麗になるアレだ。
コレだって油だ。ダメ元でやってみよう。
油洗浄(リンレイ ウルトラオレンジクリーナー 700ml)
と言うわけで、そういえば先日、年末の大掃除用にスプレー洗剤を買っていたものを思い出した。ラベルを確認してみると、油汚れにも効くらしい。
このままだったら廃棄処分するしかないようなナイフなので、躊躇は無い。
まずは、100均でナイフがすっぽり入るタッパー買ってきた。油の臭いが物凄いので、自宅にあるタッパーは使いたくなかった。
ナイフをタッパーに入れて、柄の部分を中心にスプレーする。タッパーいっぱいが泡々になったらフタをしっかりして、軽く揺らしてみる。カタカタ鳴っている。
泡が落ち着いてきたので、フタを取ってみると、洗剤が茶色になっている。恐る恐るナイフの柄を触ってみると、ヌルヌルがかなり取れている! おっ! いけるかもしれない。
ということで、一度ナイフとタッパーを水洗いし、再び泡に浸けた。今度はそのまま24時間放置する。24時間後再び茶色くなった洗剤とナイフを洗い。再び泡浸けする。コレを3回行ったらベトベトはほぼ取れた。
コレで復活出来るかも? と思ったけど、よく見るとロック金具の内側がまだオイルだらけだったので、ロック金具を外して洗剤で擦ったら綺麗に落ちた。ついでなので刃も外して綺麗にしたかったけど、こっちは2日間頑張ったけど、どうしても外れなかったので諦めることにした。
乾燥
とりあえず、コレでオイルはほぼ取れたと思う。匂いもほぼしなくなった。しかし、柄の部分はニスが取れたせいかカサカサになっている。まぁ、いたしかたない。
それより、刃が汚いのが気になったけど、よく見ると刃が欠けているわけではないので、これなら後で研ぎ直せばなんとかなりそうだ。とりあえず、一度そのまま乾燥させてみる。
この状態では刃の開閉はかなり困難になっている。柄が水を吸ったせいだと思う。一度刃を完全に閉じると手で開くのは不可能だった。そのような時はペンチでこじ開けるしかない。
3日ほど乾燥させてみた。表面は完全に乾いた。でも刃の開閉はまだ渋い。
ちなみにこの文章は、すべての作業が終わって一週間程度経ってから書いていますが、今現在は普通に手で開閉出来るようになっています。
柄にニスを塗る
刃の処理は後回しにして、カサカサになった柄をなんとかしなければ。初めはサンドペーパーだけかけて、そのまま使用しようかと思ったけど、さすがにコレでは水を吸い込みまくりだし、それより気になるのは、そのままでは異常に汚れやすそうなので、このままにはしておけない。
なので、ニス(油性)を塗ることにした。まずは下地作りでペーパーをガシガシかける。ブランド名のプリントが消えた。汚れも完全に取ろうかとも思ったけど、コレは自分への戒めとして残すことにした。
ニスは2度塗りした。完全に乾いたら仕上げ用のサンドペーパーを軽く掛けて完成。
刃を研ぐ
今度は刃だ。どうやら6年前の僕はオイルに浸ける前に黒錆加工をしていたようだ。それがマダラになり、かなり汚い。赤サビも出ている。
だけど、大丈夫! コレがカーボン刃のメリットで自分でも簡単に研げるのだ。
まずは軽くサンドペーパーで表面を擦ると、みるみる汚れと黒錆、赤サビが取れて綺麗になった。
もう、このままでもいいんじゃね? とも思ったけど、ついでなので、ちゃんと砥石で研ぐ。(この時の写真を撮るのを忘れてた)と言っても、砥石で刃物を研ぐなんて数十年振りなので、いまいち綺麗に刃が付かなかったので、最後は、ビクトリノックスのシャープナーで刃を付けました。使えるものは何でも使う派です。
黒錆加工
最後に黒錆加工をします。前述していますが、カーボン刃は錆びやすいです。濡れたまま放って置くと一晩で茶色の錆(赤錆)が浮いて来ます。見た目も悪いですし、刃もボロボロになります。
だったら錆止めの油を塗っておけばいいじゃん。とも思うけど、このナイフでは口に入れるものも切ります。なので、たとえ食用(時間が経てば酸化してしまう)だったとしても、油の類いを塗るわけにはいきません。
誰かは知りませんが、茶色の錆がダメなら黒錆を付けちゃえばいいじゃん! と考えた人がいたんですよね。黒錆は刃の表面に膜を作る役割をします。その膜のお陰で、刃が直接酸素に触れることがなくなるので、結果、鉄の酸化を防ぐことが出来て赤錆は発生しにくくなります。なので、少し扱い易くなります。
オピネルナイフ(カーバン刃)を買ったら、柄のオイル浸けとこの黒錆加工を行う人は多いですよね。
よくよく考えたら、黒錆加工までして錆が付くのを嫌うなら、初めから錆びにくいステンレス刃のモデルを買えばいいんじゃん。と気が付いて3本目のオピネルナイフはステンレス刃にしたんですよね。
ここから僕が行った黒錆加工について簡単に書いておきます。まぁ、備忘録も兼ねていますが・・・。
用意するもの
・オピネルナイフ(これは当たり前ですね)
・パーツクリーナー(刃から油分を取り除くため)
・空のペットボトル(No.8とかNo.10なら500mlのもので十分です)
・紅茶(普通のティーバッグ2つ3つ)
・お酢(適量)
・お湯
ペットボトルを切る
まずはペットボトルを切ります。もちろん、その前に中に残っているものを洗い流します。この時、ミネラルウォーターのペットボトルを使うと、洗わなくても良いので楽です。(どれだけ横着なんだ?)
綺麗になったら刃が完全に沈む高さで切ります。ギリギリじゃなくて少し深めにしておいた方が後々楽だと思います。
ペットボトルにお湯を入れて紅茶を作る
そのペットボトルにお湯を入れます。その時、刃が埋まるギリギリにお湯が来るようにします。そして、そこにティーバッグを入れます。コレは普通の四角いティーバッグで十分です。今回は黄色いパッケージで有名なブランドのものを3つ使いました。どこでも手に入るやつですよね。
そのまま。10分ほど放置して、充分に紅茶成分が出たらティーバッグを取り出します。すると当然ですが、ティーバッグが水分を含んでいるので、刃が埋まるギリギリに入れていたお湯(もう紅茶になっています)の水位が下がり、ナイフを入れたら上の部分が露出してしまいます。それでOKです。
酢を加える
これからナイフを浸けますが、その前に刃に付いている油分をパーツクリーナーなどでしっかり落としておきます。ここで横着すると、黒錆がマダラに付いてしまうので、ここだけは真剣に行いましょう。
刃が綺麗になったら、作った紅茶の中に浸けます。当然刃の上部は露出しているので、刃が埋まる所(黒錆を付けたい所)まで、お酢をゆっくり注ぎます。必要ならナイフで軽く攪拌して、再び静かにナイフを置きます。
本来なら、紅茶の量に対してお酢を入れる量が決まっているのかもしれないけど、そもそも、紅茶の濃度とかよく分からないし、面倒くさいので、僕は上記の方法でやっています。
放置
お酢入り紅茶には1時間から3時間程度浸けておけば大丈夫だと思います。この日は気温も低かったので、3時間ほど浸けました。間違っても6年も漬けるヘマはやらかしません!
あとは取り出して、流水で十分に濯げば完成です。この時付いた水分はしっかり拭き取っておきましよ。
もし、この時、黒錆がマダラになっていたり、付き方が気に入らなかったら、サンドペーパーからやり直します。もちろん、僕は多少変でもやり直しません。面倒なので・・・。
以上のやり方はあくまで僕自身のやり方です。恐らくちゃんとしたやり方は他にあると思うので、ちゃんとやりたい人はGoogle先生に尋ねてみましょう。
最後に
今回の事で僕が皆さんにお伝えしたいことはただひとつです。
オピネルナイフをオイルに6年も浸けるは辞めましょう、
そして、僕が今回の一連の作業が終わって考えたことは、そもそもオイルに浸けなけりゃ使えないナイフが売っているはずがないので、このオイル浸けって本当に必要なの? でした。もう、オピネルナイフを買ってもオイル浸けはしないと思います。
オチ
ちなみにケースが欲しくて買ったNo.10オピネルですが、オピネル本体は上の通りなんですが、肝心のケースの方は現在、行方不明になっています。どこにあるか知りませんか?
おすすめ
まだオピネルナイフを1本も持っていなくてどれにしようか悩んでいる方は、下記のNo.8のステンレス刃のモデルをおすすめします。
以下はこの記事のモデルと同じものです。