日本ではあまり馴染みがないと思いますが、アメリカの国立公園などで1泊以上のキャンプをするときには必須のアイテムです。
アメリカのパーミット(許可証)の書類の中では、[Bear Canister]、[Pannier]、[Bear Box]、[FOOD STORAGE]などと表記されていますが、日本では[熊缶]なんて呼ばれたりもします。なので、今後この記事内では[熊缶]に統一します。んで、そもそもその熊缶とはなんぞや? という方のために簡単に説明しますと、使う場所は前述のとおり、アメリカの国立公園内で1泊以上のキャンプをするときに使用します。目的は熊に食事を持っていかれないようにするため、または熊を人間から守るためです。なので、この熊缶は人間には開けられるけど、熊には開けることはおろか、破壊することも出来ないような作りになっています。
使用方法として、就寝時、この中に食料はもちろん、匂いのするもの(化粧品、歯磨き粉、石鹸、日焼け止め、ゴミなど)を入れて、テントから一定距離離して置きます。そのとき、崖っぷちや水のそばには置かない方がよいと思います。たとえ熊が開けられなくても、小突いて崖から落としたり、川に流されたりしたら厄介なので。
そもそも熊対策に関しては、日本の場合だと、食べ物をテントの外に置かないで、と指導されます。アメリカだと逆に、食べ物はテントの中には置かないで、と言われます。たしかに熊は臆病な生き物なので、なにか特別なことでもないかぎり、人に近づこうとはしないはずです。そして、その特別なことが、人間が持っている食料ということになります。そこに食べ物があると分かると、熊は死にものぐるいで奪いにきます。食べ物のためなら人間なんかは簡単に排除されてしまいます(そもそも人間そのものが食べ物になることもあるようですが・・・)。もちろん死んだふりを理解して、空気を読んでくれる熊なんていません。
そこで登場するのがこの熊缶です。現在、日本ではほとんど使用するシーンはありませんが、今後、アメリカのように熊の生息地でキャンプをする場合はこのようなものが必要になるかも(?)しれないというわけで、一足早く紹介します。
現在、この熊缶は日本での製造は無いと思われます。また手に入れることは出来ることはできますが、特別なお店でしか取り扱っていません。なので、今回紹介する2つの熊缶はどちらもアメリカから購入しました。
今回紹介するのは[BearVault BV-5oo]と[Wild Ideas The Weekender]の2種類です。特に[BV-5oo]の方は迷ったらコレを買っとけ! 的な定番中の定番です。一方[The Weekender]の方は購入の敷居がかなり高く、日本語でのレビューは少ないので、なるべく詳しくお伝えしたいと思います。
ちなみに[BV-5oo]の方は所持はしていますが、いまだ実際に使用してことはありません。[The Weekender]の方はみちのく潮風トレイルをセクションハイク(青森県八戸〜岩手県久慈)したときとジョン・ミューア・トレイルをセクションハイクしたときの2度使用しました。なので、実際の使用感などもお伝え出来ると思います。
BearVault BV-5oo
まず、紹介するのはBearVaultのBV-5oo(以下、BV-5oo)です。BV-450という一回り小さいサイズのものもあります。熊缶と言えばコレ! っていうくらいメジャーなものです。ジョン・ミューア・トレイル(以下、JMT)を舞台にしたドキュメント映画の「Mile… Mile & a Half」でも使用されていますね。実際にJMTを歩いたときもたくさん見ました。
JMTに挑戦しようと思ったときにまず、購入したのがルートマップとこの熊缶でした。2016年の09月のことでした。実際にアメリカに行ったのは2019年のことだったので(詳細は別途記事にします)随分と気の早い買い物でしたね。
でも、結局は使わずじまいでしたが・・・。
開け方
このBV-5ooは開け方にちょっとしたコツが必要です。
黄色い矢印のある黒い部分が蓋になります。白い矢印は本体です。それぞれボッチ(突起物)を指しています。写真の状態はフタがロックされた状態です。
さっそく開けてみましょう。写真の状態ですとフタを左にひねります。すると白い矢印のボッチに黄色い矢印のボッチがぶつかってそれ以上フタをひねることができません。
そこで、黄色い矢印のボッチを押し込みます。よく見るとフタの黒い部分がひしゃげているのが分かると思います。
黄色い矢印のボッチを押し込んだ状態で、フタをひねれば、白い矢印のボッチの下を黄色い矢印のボッチが通過します。
ロックは2ヶ所あります。黄色い矢印のふたつのボッチがそれです。1つ目がロック解除出来たので、同じ要領でもう一つの黄色い矢印のボッチを白い矢印のボッチをくぐらせます。
2つの黄色い矢印のボッチが白い矢印のボッチを越えました。これでロック解除です。そのまま蓋を左にひねればフタは外れます。
逆にロックをかける時は、黄色い矢印のボッチの形状を見れば分かると思いますが、普通に蓋をひねり、最後までフタを回せば自動でロックがかかります。
特徴
この熊缶の特徴は、本体が結構分厚いポリカーボネイトで作られています。ちょっとやそっとでは凹みません。それ故、ちょっと重いです。
また、後述もしますが、表面がけっこう凸凹しているので大きめのステッカーは貼りにくいと思います。写真で見える点のボツボツは反対側にありません。転がり防止なのか? ザックの上部に外付けするさいのストラックの滑り止めなのかは分かりません。
キャンプ場などでは結構使用率が高そうに思えました。なので、自分のを識別するためにも、好きなステッカーを張ってカスタマイズしましょう。
しか〜し、そもそも、透明で中身が見えるので間違いようがないかな・・・。
結局、最終的になぜこのモデルを使わなかったかと言うと、単純にザックに入らなかったからです。持っていくザックを決めたあとに、アメリカの掲示板に、
「そのザックにこのモデルが入るのか?」
という質問に対して、
「水平にして入りますよ〜」
って言う答えだったので、購入をしてみたものの、実際には入りませんでした。縦にすれば入るには入りますが、他のものを入れるスペースが無くなってしまいます。なので、使用を断念しました。
Wild Ideas The Weekender
次は、[The Weekender]です。[BV-500]はプラスチック感全開ですが、こちらは逆に金属感イッパイです。ちょっと調べても素材がわからなかったんですが、恐らく上下の銀の部分はアルミニウムで、黒い本体の部分はグラスファイバー、またはカーボンファイバーだと思います。
アメリカから届いて一番最初に箱から出した時の印象は[BV-500]は
「おもっ!」
でしたが、こっちは
「かるっ!」
でした。
見かけの素材の印象も大きく作用した結果だと思います。
開け方
[BV-500]と違ってこっちの[The Weekender]は開けるのに道具が必要です。写真にあるように3ヶ所のネジを回す必要があります。これは指とか爪で開けらません。結構硬いです。なのでコインのような道具が必要です。
私の場合は写真のようなワッシャーに細引きを通してそれをカラビナに結んで、ザックの後ろにぶら下げていました。
ワッシャーをネジの溝に差し込みます。円周に対して(写真のように)平行になっている時はロックされているときです。ロックを外すには90度回して外します。
円周に対して直角になっている状態がロックが外れているときです。これを3ヶ所全て直角にするとフタが外れます。
ロックする場合はまったく反対のことをするだけです。
特徴
蓋が開いた状態です。周りにあるエンジ色の部分はOリングです。フタをしっかり閉めれば、多少水に落としたくらいでは中に水は入ってきません。
写真だと見にくいですが、[BV-500]は蓋が完全に分離しますが、こっちは本体とフタがワイヤーで繋がっています。フタを無くすと大変なことになるので、この機能はありがたいです。また、ワイヤーはネジ止めされているだけなので、簡単に分離させることは出来ます。
フタの裏側にはシリアルナンバーがあります。ひとつひとつの商品に誇りを持って製造しているってことですかね。
[BV-500]と違ってこっちは表面に凸凹が少ないので、写真のようか大きいステッカーを貼ることができます。また、こちらは中身が見えないので、ステッカーなどは貼っておいたほうがよいと思います。
どのくらい入るの?
ちなみに、どのくらいの量が入るかと言いますと、この写真はJMTのときに持って行こうと思ったものです。しかし、出発間際になってアメリカには肉類(エキス含む)の持ち込みは出来ないことを知り、急遽入れ替えました。なので、これは幻のJMTの食料ということになりますね。でも、大体の量の目安にはなるんじゃないでしょうか。
実際にはアメリカに行ってから少し食料を買い足そうと思っていたので、少し余裕をもたせていました。なので、この写真よりはもう少し入ります。この写真では想定としては5泊分の食料です。私自身かなり少食の方です。入れようと思えば1週間分は入ると思います。
比較(BV-5oo vs The Weekender)
BV-500 | The Weekender | |
---|---|---|
大きさ(直径 X 高さ) | 220.98mm X 1322.58mm | 228.6mm X 1266.7mm |
内容量(L) | 約12L | 約10L |
重量(g)*実測値 | 1134.7g | 941.3g |
価格 | 12,047円 | 44,337円(関税1,500円含む) |
購入日 | 2016年09月09日 | 2019年02月28日 |
上の表はスペックの比較です。
大きさ
大きさは[BV-500]の方が大きいです。ザックの大きさと、食糧計画を考えて選択すればよいと思います。
内容量
上の表の内容量は単純に大きさから体積を出して、それを元に大体のリットル数を示しています。なので、実際に入る量はこれより1リットル程度少なくなると思います。本来なら、内寸から計算したほうが正確ですが、そもそも、その内寸がわからんのです。凸凹しているので実測しても誤差は大きそうだし・・・。水でも流し込んで測れば正確なのかな?
重量
これを選ぶ理由で一番重要視しているのは、ほとんどの人が重さではないでしょうか?
[BV-500]が約1,135g、んで[The Weekender]が約940g、その差はわずか、約195gです。値段を考えると・・・おのずと答えが・・・。
価格
この2つのモデルの最大のちがいですね。上の表では送料と[The Weekender]では関税も含んでいます。なので私が最終的に支払った額です。どちらを選んでも機能的には違いはありません。重さのちがいも微々たるものです。さぁ、あなたはどちらを選びますか?
総括
すぐ上でも書きましたが、ようは、重さに対していくらまで出せるか? って言うことですね。あとはデザインとか、ですかね。でも、ここまで価格が違うとね・・・。
コストパフォーマンスで[BV-500]を選ぶか、1gでも軽くしたいと[The Weekender]を選ぶか・・・。それはあなた次第ですwww
まぁ、冗談はさておき、わたしの場合は最初に[BV-500]を持っていたのにかかわらず、[The Weekender]を買ったのはなぜか? 前述もしましたが、想定していたザックには[BV-500]を入れるのは無理があったので、新しい(大きい)ザックを買うか、熊缶のサイズを変えるか考えて、考えて、考えて、、、結局、熊缶を新調することにしました。かなり高価なものでしたが、数年前からJMTのために貯金をしていたので、なんとかこれを購入しても予算内に収まりそうだったので、かなり無理しましたが、だいぶ無理しましたが、購入しました。
P.S.
おまけですが、熊が小突いても壊れないくらい丈夫ですので、この2つのモデルは椅子にもなります。
海外のBBSに書かれていたか、Youtubeで見たか、[The Weekender]の方はフタの部分が金属なので寒い時はかなり冷たくなるそうです。まぁ、寒い季節に使うかどうかは別にして、JMTを歩くのはだいたい7月から9月くらいが多いと思います。夏ですね。しかし、標高が高いので朝晩はかなり冷え込むことがあるようです(わたしの時はそれほど寒くはなかったですが)。なので、そのようなときに椅子として使用するとお尻がちょっと冷たいかな? とも思いますが、まぁ、スッポンポンで座ることも無いだろうし、、、一応、こんな話しも読んだ(見た)ことがあるよ、程度の補足でした。
ご購入は・・・
現在(2020.04.09)、[BV-500]の方はAmazonでも手に入るようですね。でも値段が少しお高いので、アメリカから取り寄せた方がいいかも、です。後日見たら無くなっていました。やはり、Amazonでの購入は考えないほうが良さそうです。ちなみに[BV-500]の方は注文してから約5日ほどで届きました。それに対して[The Weekender]の方は、約3週間もかかりました。恐らく受注してから組み立てるんじゃないでしょうか? なので注文は余裕を見て頼んだほうがいいですね。
2021年夏追記。
現在、受注から納品まで5週間ほど掛かるようですね。日本に送ってもらうことを考えると、納品は二ヶ月くらいと考えていたほうが良いかもしれませんね。
また、[The Weekender]の方は私が買った時は$288でしたが、現在は$309とかなり値上がりしていますね。それに対して、[BV-500]の方はあまり変わりませんね。
送料は[The Weekender]の方が高いです。しかも、関税で¥1,500も取られました。届いた時に「関税で箱を開けて、中身を確認しましたよ」シールが貼られていました。X線で見たって中身が空の缶だってわかるだろうにね・・・。勝手な憶測ですが、ちょうどこのころ米中間での関税に関してゴチャゴチャしていた時期なので、そのあおりを受けたのでは・・・って勝手に思っています。
REIで購入
BearVault BV500 Journey Bear Canister【BearVault】
Wild Ideasで購入
The Weekender Bearikade Wilderness Food Storage Canister