今回の山の不思議は今までとはチョット毛色が違って、山で出会ったある人のお話をしたいと思います。なので、霊的な事を期待している人は完全に期待外れなのでご容赦ください。
まぁ、この世で最も怖いのは幽霊よりも人間って話なんですけどね・・・。
毎日山登り
山ノボラーにとって嬉しい時ってどんなときでしょう? 人によっては自分のレベルよりチョットだけ高い山に登れた時や、ずっと憧れていた山に登った時なんかは嬉しいですよね。山頂に立たなくても、雷鳥の親子を見たり、なかなかお目にかかれない高山植物に出会えた時も嬉しいですね。自然現象なんかでは、御来光や雲海、ブロッケン現象なんかを見ると、テンション爆上がりですよね。人によっては山で運命の人に出会った(!)時なんて最高でしょうね。
まぁ、こういうことは人によって様々ですよね。というか、山登りが好きなら全て当てはまりますよね。
じゃあ、僕にとっての嬉しいことって何だろう? ここでチョット言葉を変えますね。「嬉しいこと」は結果ですが、その結果に辿り着くために僕が山登りに望むこと、とすると、それは「毎日山登り」ですかねー。山登りにハマると一度は考えるでしょ? そうは言っても、ふつうの会社員にとっては、夢のまた夢のお話をですよね。
このブログをある程度読んでいる方ならご存知だと思いますが、僕の前職はある山域の地形図を作るお仕事でした。厳密に言うと、そのお手伝いです。
そのあたりの詳しい話しは以下のリンクで詳しく書いているので、そちらを参照して下さい。そんな時間ねーよー! と言う方は、ある期間(4ヶ月〜5ヶ月)とにかく山に登りまくりました。基本的土日以外は山登りです。そう思っていて下さい。
僕が登っていたのは山梨県にある山です。その山自体は山梨百名山に選ばれていて、正面に富士山がドドーンと見える人気の山です。しかし、僕が登っていたのはその山の西側で、登山道はおろか、バリエーションルートさえも無いような山域でした。そんな山の中を地形図を作るために毎日のように這いずり回っていたと言うわけです。
当初は大勢いた仲間が、過酷過ぎる労働環境や怪我で脱落していきました。山登りって言っても、整備された登山道なんかはありません。沢を遡上したり、崖を這い登ったり、木にぶら下がって飛び降りたり、と一歩間違えれば大怪我で済めば御の字と言ったようなところが職場です。普通の人にしてみれば、ブラックどころの話ではないでしょう。
しかし、山登りを趣味としている僕には「ここは天国ですか?」と聞きたくなるような環境です。ただで、いや、お金を貰って山に登れるだけでは無く、地形図を作るって言うんですから、山登り好きにとってはたまらない環境ですよね。
と言うわけで、夏のお盆過ぎから始めたそのお仕事も2ヶ月を少し過ぎた頃、初めの頃は現場まで歩いて3時間ほど掛かっていたのが(人間という生き物は慣れる生き物なんですね)1時間程度で現場に着けるようになりました。その頃には、だいぶ身体も山登りに慣れてきて、楽に登れるよになっていました。楽と言っても、決して鼻歌交じりに登れるような山ではないので初めの頃に比べて、ということですけどね。
10月の入ると、山の上の季節はすっかり秋になり、葉が色付き始めていました。
カレーの香り?
その日もいつものように、現場での作業を終えて、みんなで(大抵4、5人)ワヤワヤと下山している時に、どこからともなく、カレーの香りが漂ってきました。それほどハッキリした匂いではなかったので、みんなハラが減っているから、幻覚ならぬ、幻臭なんじゃね? なんて話をして、その日は特に気にせず、そのまま山を降りました。
そもそも、そこは誰かがいるようなところではなく、2ヶ月間ほぼ毎日歩いているけど、一度も人に会ったり、見かけたりしたことははありません。むしろ、猿や熊を見る確率の方が高いようなところなどで、そこに人がいるなんて考えもしませんでした。
登山道で煙?
カレーの香り事件の翌日か翌々日、同じようにみんなで山を下っていました。
先日カレーの香りがした辺りで、今度は煙の匂いがします。さすがに、人気の無い山中で煙の匂いすれば、山火事? などと考えて、緊張して辺りを見渡しますよね。
僕たちが歩いているより、一段下に狭い河原があり、その先に夏場は水量が減っているけど、この時期はそこそこ水量の増えている沢があります。そこの狭い河原の一角から煙りが上がっています。
「ん? 何だあれ?」
慌てて近づいてみます。僕たちがいる場所からは大岩の陰になって、その煙りの発生源は直接は見えませんでしたが、たしかにその大岩の向う側から煙が上がっています。
遠巻きにゆっくりと大岩をに回り込んで見ると・・・
「えっ?」
人がいた!
大岩の向こう側は下部が岩室のようになっていて、人が1人しゃがんで入れるくらいのスペースがあり、そこに人が座って焚き火をしてます。煙りはその焚き火が原因でした。
煙の原因は分かりましたが、それ以上に人がいたことにビックリです。そもそも、ここは人がヒョイと入ってこられるような場所ではなく、前述したとおり、2ヶ月通って誰一人見かけていません。土地勘が無い人が入って来られるような場所ではないのです。
それでも、初めは釣り人が釣った魚を調理しているのかな? とか考えましたが、よくよく考えれば、ここは(恐らく)富士川の支流の支流でいくつもの砂防ダムを越えたところにある小さな沢です。こんなところに魚なんているのか? 最終的には半年近くここには通いましたが、釣り人なんて1人も見ていません。それに、幾度も沢を渡渉していますが、魚の姿は一度も見たことがありません。じゃあ? 彼(と呼ぶことにします)は何モン?
彼の正体?
この日は彼がいるのを確認しましたが、まだ接触はしていません。見た、と言っても、まだそこそこ距離があったし、岩の影になっているので、人がいるのは間違いないですが、どんな人かは分かりません。しかし、彼はこちらの存在には気が付いていると思います。まぁ、4、5人でワヤワヤ歩いていたので、彼には我々の声は届いているはずです。
それからしばらくは、その人の話題でいっぱいになったのは想像できると思います。みんな、にわかコナン君になって色々と推理します。こんな人も来ないような山の中で何をやっているのか? ただ単にキャンプを楽しんでいるだけ? まさか自殺志願者? 中には犯罪者が潜伏してるんじゃね? なんて推理も飛び出す始末。
まぁ、明日にはいなくなるでしょ・・・。その時はそんなふうに考えていました。
しかし、その後数日経っても彼はそこにいました。さすがにおかしいだろということになり、1人が接触しに河原に降りて行きました。全員でゾロゾロ行くのは相手を刺激しまくりなので、それは避けました。一見コワモテだけど、面倒見のとっても良いB氏(仮名)が代表で彼の元に行きました。
僕たちは遠巻きに見ています。まさか、突然、銃でズドンッ! なんてことは無いとは思いますが、チョット緊張して見守ります。
B氏は岩室の前で、彼と視線の高さを合わせるようにしゃがんで、話しかけています。とりあえずは、ズドンッ! とはされることはありませんでした。僕たちのいるところからは彼の手元は見えますが、顔は見えません。
5分も経ったでしょか。B氏が戻ってきました。
結局は彼は自殺志願者でも、犯罪者でもありませんでした(当たり前だっ!)。
彼が語ったことことを要約すると、
都会の生活に疲れて、流れ流れてここにたどり着いた。ということでした。まぁ、彼の気持ちが分からなくもないでよね。僕も嫌なことが続いたときなんかは、自然に逃げ込みたくなりますしね。でも、なかなか実行に移す人はいないですけどね。そもそも、その都会がどこかも分からないですし、彼に何があり、どういう経路を辿ってここに辿り着いたのかも分かりません。結局は暗黙の了解で、その辺の詳しい事情には触れずにそっとしておこうということになりました。
それからしばらくは、僕たちは仕事を終えて、山から降りてきた時に、彼の存在を確認するのが日課のようにになりました。といっても、接触するわけでもなく、挨拶をするでもなく、かたわらを通り過ぎるだけですが・・・。でも、遠巻きからでも、彼の存在は確認出来ました。焚き火をしている時は煙が上がっているしね。
そして誰もいなくなった
彼と接触した日から、10日から2週間も過ぎたでしょうか。突然、彼の存在が確認出来なくなりました。
そこで、彼のいた岩室の近くに行ってみると、彼の姿はありませんでした。
岩室は大岩の下にポッカリと穴が開いた構造をしています。奥行きはあまりないですが、人が座ったり、ギリギリ横になれるスペース(勢い良く飛び起きると天井の岩に頭を打ちそう)があります。10月とはいえ山の夜はかなり気温が下がります。なので彼は外気を避けるように穴の入り口に石を積んで塞いでいました。しかし、今はその積んでいた石は崩されていて、一見してそこに人がいたとは思えないくらい綺麗に片付けられていました。「立つ鳥跡を濁さず」ってことですかね。
改めて彼が2週間くらいいた場所を見てみると、思っていたよりかなり狭く、よくこんなところに2週間もいたなぁ、と感心してしまいました。
以下の写真は彼がいなくなってから2ヶ月くらい経った頃に撮影したものです。かろうじて、岩室の中にベッド代わりに使っていたと思われる枝が並べられているのが見えます。いや、焚き火の燃料かな?
彼は何処へ行ったのでしょう? その後、二度と彼の姿を見ることはありませんでした。自分の家に帰ったのでしょうか? そうだったのなら良いのですが・・・。まさか、また他のところへ流れていった、なんてことはないでしょうね。
その数年後の台風の直撃で、ここの岩室は大岩ごと流されて、今はその場所を特定するのも難しくなっています。なので間違ってもここに行こうとは思わなでくださいね・・・。
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