山の失敗談、テント編、第三弾です。ほじくればテント絡みの失敗はまだまだありそうですが、これで一度打ち切ります。
まぁ、今回もいつものように、致命的な失敗というわけではありません。側から見てると微笑ましい失敗です。YouTubeにおもしろ動画としてアップすれば、そこそこの再生回数が稼げそうです。しかし、残念ながら動画は撮っていないので、僕のその時の姿をみなさんが想像して笑っていただけると、失敗も無駄では無かったというわけで、報われることでしょう。
もちろん、本人はいたって真面目に行動しているだけなので、その辺はご理解ください。決して笑いを取りにいっているわけではありません。
初めての雪上テント泊
もう、上のタイトルを見ただけで、コイツ、絶対何かやらかすぞ! って思っているでしょう。そのご期待は裏切りませんぜ、ふっふっふっ。
テント泊をしていて、夜中に雪が降って、翌朝起きてみると、辺りが真っ白になっていたことは過去に何度かありました。しかし、最初から雪の上にテントを張ってのお泊まりは初めての経験でした。
今回の舞台は上高地です。春、夏、秋と何度も訪れたことのある、僕にとっての別荘のようなところです。山に登らず、小梨平でキャンプをして帰ってくるだけということも何度もあります。最初の雪上テント泊なので、慣れたキャンプ場がいいだろうということで、ここに決めました。まぁ、理由はそれだけではなく、春、夏、秋は何度も来ているのに、冬はまだ一回も来ていなかったため、ただ単純に来たかっただけというのも、ここを選んだ理由のひとつです。
あれ? 冬の上高地って閉鎖されているんじゃね?
と思った方は、その時のブログのリンクを下記に張っておくので、ご覧ください。冬季封鎖時の上高地への入り方を書いています。
小梨平までの工程は上のリンク先を見ていただくとして、早速、核心部から書きます。
初めてのテントコロコロ
三月の上高地はまだまだ冬の真っ只中で、この日も雪が強風で舞っているような、テント泊初心者には、決してお勧め出来ないような天候の日でした。
雪上でテントを張るのは初めてなので、雪の地面(雪面)を整地するのも初めてです。持ってきていたスコップとスノーシューを駆使して、なんとかテントを張れる場所を確保し、テントを広げ、ポールをスリーブに通します。ペシャンコだった緑の布が、あっという間にテントに変身しました。もちろん、風が強いので、飛ばされないようにテントの天頂部を手で押さえています。ちなみに、今回のテントはニーモのアンディ2(スリーブ式)です。
「早くペグを打って、テントを固定したい」
はやる心と裏腹に、手袋をした手ではガイロープがなかなか言うことを聞いてくれません。思わず、両手でガイロープを顔の前に持ってきて緩めようとした時、
「あっ!」
目の前にあったテントが消えていました。とっさに辺りを見まわすと、テントがコロコロと転がって僕から遠ざかっていきます。
「やばい!」
と、テントを追いかけますが、柔らかな深雪とスノーシューを履いた足では、思うように移動できません。
「あれ? 深雪の上を歩くのに適しているのがスノーシューじゃないの?」
と、思われた方もいるでしょう。自慢ではないですが、僕の体重はスノーシューの浮力をも優っているのですよ、えっへん!
そうこうしているうちに、テントは止まりました。しめたっ! 今ならテントに追いつける。とばかりに足を踏ん張ったら、雪を踏み抜き、股下まで潜ってしまいました。そこで、初めて冷静にテントの位置を確認します。
小梨平のキャンプ場を利用したことがある方なら知っていると思いますが、ここには真ん中に小さな沢が流れています。そこは冬の今の時期も凍ることなく水が流れています。深さも幅もはそれほどでもないですが、U字溝のようになっていて、夏場でも簡単には沢に降りられないようになっています。もし、そこにテントが落ちてしまったら、引き上げるのにかなり大変だと思います。しかも、その縁は雪庇のように雪が沢側に張り出しているので、降りるのはそれなりの危険も伴います。
テントはその沢の縁に立っている木に引っ掛かっています。しかし、いつ風の悪戯で飛ばされても不思議ではありません。そうなる前にテントを捕獲しなくてはなりません。僕は慎重に股下まで埋まった足を引き抜き、次の一歩を踏み出しますが、再びズブズブと潜ってしまいました。雪面に対して点の力を掛けると、潜ってしまうので、今度は上半身も雪面に接地するようにして、点ではなく、面で接するようにして、匍匐(ほふく)前進で進みます。そして、ついに、テントの端を掴むことに成功しました。
「ふぅ〜」
テントを元の場所に戻して、辺りを見まわして、
「よしっ! 誰も見ていない!」
この日、小梨平のキャンプ場には僕のところから見えるだけでも、他に二張りのテントがありましたが、それぞれが、そこそこ離れているので、テント内に人がいるのか、散歩にでも行っているのか、人の気配は感じませんでした。
2度目のテントコロコロ
今度はテントがひしゃげるくらい、強くテントの天頂部を手で押さえます。早くガイロープを張って一安心したい、と手袋を脱いで作業をしました。でも、片手での作業ではなかなか思うようにガイロープが伸びてくれません。
そんな時、ふと風が弱まりました。
「よしっ! いまだ!」
と、テントを押さえていた手を離した時、待ってましたとばかりに、風が強くなり、再び視界からテントが消えていました・・・。
「あ〜〜〜!」
再びテントはコロコロと、今度は先程とは違う方向に転がっていきました。そして、先程と同じように、沢の縁に立っている木に引っ掛かり止まりました。
さすがに2度目ともなると、少しは慣れたようで、ちょっとは冷静になっていて、これはブログのネタになるな、と、とっさにカメラを取りに戻ろうとしている僕がいました。
しかし、いやいや、そんなことをしている場合ではない! と思い直して、再びテントを追いかけます。あぁ、なんかデジャヴを見ているようだなぁ。と思いつつも、2度目なので今度は最初から慎重に進み、今度もテントの捕獲に成功しました。
二度あることは三度ある、と言いますが、さすがの僕も学習します。今度は無事にテントの設営に成功しました。
普通は風の強い日は、テントを立ち上げる前に、ペグで仮止めするなりの対処をするのですが、完全に舐めていました。そもそも、スリーブ式のテントはあらかじめペグを打ってからの設営には向いていません。それに対して、吊り下げ式のテントは、テントを立ち上げる前にペグでしっかりとテントを固定してから立ち上げることが容易にできます。
こういう経験があったから、僕はスリーブ式嫌いになっていったんだと思います。最近(と言ってもコロナのせいで全然行ってないですが・・・)、はスリーブ式ばかりです。(以下に、僕のテント遍歴の記事のリンクを貼っておきます)
そもそも、冬のキャンプ(最近は関係ないですよね、某漫画のせいでね)で、ソロってどうなのよ? って言う議論もあるかもしれません。確かに、今回のようなことは2人いたら、起こらなかった可能性は高いと思います。しかし、2人いたらいたらで、1人では決して起こらない事故もあるかも知れませんよね。なので、どちらが正解とかいうことではなく、不測の事態が起こった時に、その時その時に適した対処ができるか? ということが大事なんだと思います。
この【山の失敗談】シリーズを読んだことがある人なら、何度も読んでいると思いますが、
「死なない程度の失敗はすべし!」
というのが、僕の持論です。失敗から得られることは少なくないと思っています。もっとも、これを人に積極的に進めようとも思っていません。人によっては『失敗 = 悪(悪いこと)』っていうふう考えている人もいますしね。世の中には出来るだけ失敗しないように生きている人っているんですよー。もちろん、僕も望んで失敗しようと思ってはいません。しかし、失敗を恐れて何の冒険もしないのは僕の生き方には合っていないと思っています。
なので、この【山の失敗談】シリーズに終わりは無いと思います。
な〜んて、カッコつけていますが、このシリーズを思い付いた時は、失敗なんて全然していないので、全然成り立たないじゃん! って思っていましたが、ひとつ出てきて、ふたつ出てきて、みっつ出てきて、ってやっているうちに止まらなくなりました。というか、色々と思い出してきました。なので、まだまだストックはあります。唯一不満なのは、最近のコロナのせいで全然山に行けていない事です。
コロナが収まったら、失敗をどんどん生産していくぞー٩( ‘ω’ )و
その他の【山の失敗談】シリーズ
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【失敗談】番外編《勘違いの章》
今回は僕自身の経験では無く、父が経験したことです。自分の経験ではないので、ここに書くべきか悩みましたが、チョットした勘違いが、遭難を引き起こしてしまう可能性があり、しかも、それは、誰でも被害者になり、加害者(と言っても、決して悪意がある加害者ではなく、善意の加害者なんですが)になるかも・・・というようなことなので、書くことにしました。 -
【失敗談】迷走編《世附権現山〜ミツバ岳の章》
自分もここの山域でルートミスした事があるのを思い出しました。具体的に亡くなられた方がどのようなコースを辿っていて、何処で迷われたのかは分かりません。しかし、この時のはいつもより象徴的だったですし、あぁ〜、人ってこうやって誤ったルートに入って行くんだなぁ。と思える内容でしたので、詳しく書いてみたいと思います。 -
【失敗談】撤退編《初めての富士山の章》
僕が初めて富士山に登った(登ろうとした)のは、2006年06月のことでした。それは山登りを始めてまだ半年程度しか経っていない頃のことです。今回はその時のお話です。 -
【失敗談】ビバーク編《灼熱地獄の章》
今回の失敗談は『高島トレイル』を歩いていて、暑さのため計画通りに歩けず、ビバークを余儀なくされ、途中でリタイアしたというお話です。ビバークと言うと、雪山で雪洞を掘って、震えながら一夜を明かす。なんてイメージを持っている人も多いのではないでしょうか?しかし、今回の舞台は真夏の低山です。ある意味、真逆な環境ですよね。 -
【失敗談】テント編《風の悪戯の章》
まぁ、今回もいつものように、致命的な失敗というわけではありません。側から見てると微笑ましい失敗です。YouTubeにおもしろ動画としてアップすれば、そこそこの再生回数が稼げそうです。 -
【失敗談】テント編《骨折の章》
大抵のテントにはその型を維持するための骨(ポール)があります。スリーブにポールを通すもの、ポールにテントをぶら下げるもの、中には、トレッキングポールや木の枝をつっかえ棒のように使うものもあります。例外的に細引きだけでテントを維持させる場合もありますが、まぁ、これは特殊な場合ですね。 -
【失敗談】テント編《逆襲の章》
今回お話するのは失敗と言うより、考えがいたらなかったっていうお話です。僕にもう少し想像力があれば、もしかしたら避けられたかもしれないってことですね。 -
【失敗談】暗黒編
大抵の登山地図にはコースタイムが書かれています。そこそこ山登りの経験のある人なら、自分の運動能力と照らし合わせて、そのコースタイムに対してx0.8とか1.2とか掛けて自分のタイムを割り出して、山行計画を立てたりします。 -
【失敗談】炎上篇
今回は炎上編です。火にまつわる失敗談です。火にまつわると言っても、テント内でバーナーを使って、テントが丸焦げになったとか、カミナリに撃たれて丸焦げになったとか、山頂火口のマグマに落ちて丸焦げになったとか、そんな話ではありません。