今回お話するのは失敗と言うより、考えがいたらなかったっていうお話です。僕にもう少し想像力があれば、もしかしたら避けられたかもしれないってことですね。とは言うものの、いつもの失敗談の時と同じように、それほど大仰な事例というわけではなく、後になってみれば、ただの笑い話になる程度のお話です。
しかし、この事例を頭の隅にでも置いておいてもらえれば、僕と同じような失敗をすることが避けられるかもしれないので、最後まで読んで頂ければ幸いです。
信越トレイルを歩く
ちょうど信越トレイルがテント泊のみで全線歩けるようになった頃(2012年08月12日〜16日)のお話です。
僕は約80km(最近はもっと伸びて110km程になったようですね)を4泊5日で歩く計画を立てました。4泊全てテント泊の予定です(実際には3泊目はバンガローに泊まりました。その辺の経緯は上のリンクを御覧ください)。
1泊目は予定通り赤池のほとりにあるキャンプ地に泊まりました。信越トレイルは基本的に、キャンプをするのは有料&要予約制で、それぞれのキャンプ地を管理する組織に直接予約する必要があります(ありました? 現在のルールは把握していません)。
前述した通り、信越トレイルが全てテント泊で歩けるようになった直後でした。なので、赤池のキャンプ地も整備されたばかりのようで、草を斜めに伐採しているせいで、断面が鋭利になり、テントの底に無数の穴を開けたのは、今となっては良い思い出です。もし、テントの真下からライトを照らすことが出来たら、きっと、テントの中でプラネタリウムが出来たでしょう。
まぁ、それは別にどうということでは無いです。しかし、最初のトラブルは2日目の朝に僕のアウトドアの扉をノックしました。
最初のトラブル
朝、朝食を食べ、テントをたたみ、さぁ、2日目も頑張るぞー! とザックを背負って、ベルトやストラップ類を締めて、歩き始めようとした時、
あれ?
なんかザックが斜めっているような気がする。装備を詰めた時、なんか偏って入れたかな〜と、思い出そうとしても、特に変わった事はしていなく、いつものように入れたはず。なんだろう? とストラップ類を一度全部緩めて、締め直してみる。そこで気がついた。ウエストベルトがおかしい。ギュッと締めているのになんかグラグラしている。
ザック(グレゴリー トリコニ65)を一度下ろして、ウエストベルトの部分をよくみたら、ベルトの芯として入っているプラスチックのパーツがキレイに割れている。あ! 原因はこれだ。この芯が折れているために、ウエストベルトを締めてもザックが垂直に保てなくなっているのだ。
あちゃー。 まだ4日も残っているのに、これは痛い。
一瞬、頭の中に“リタイア”という言葉が思い浮かんだけど、まだ1日しか歩いていないので、体力的にも精神的にもへこたれていない。まだ全然イケる。
なんとかならないかと、一旦ベルト類を緩めて、再び締め直してみる。すると、ウエストベルトを思いっきりギュッと締めればなんとかなりそうだ。しかし、微妙にザックが右に傾いてしまう。でも、なんとかなりそうだ!
結果的にはこれで、なんとか最後まで歩き通せたました。しかし、本当にベルトをギュッと締めたせいで、腰骨の所が痛くなってしまい。定期的にウエストベルトを緩めては締め直しす必要がありました。また、ザックのバランスが崩れているので、ザックの重量を上手く腰に分散できないせいで肩も痛くなりました。
まぁ、これは失敗談と言うよりは避けられない(避けらられなかった?)トラブルなので、あらかじめ想定するのは難しいので、起きてしまった後にどのように対処したかというお話です。
山では、あらかじめ想定していて避けられるトラブルと、前述のように想定しづらいトラブルがあると思います。また、命に関わるような大きなトラブルもあれば、この【山の失敗談】シリーズで紹介しているような、些細なトラブルもあります。どちらも適切な対処をするのは同じですが、想定出来るトラブルは全力で避けたいですよね。あらかじめ、どんな種類のトラブルがあるか知っておくのも、対処の一つだと思います。そんな時のための【山の失敗談】です。もちろん後付けですが・・・www
大雨の中のテント泊
かなり脱線したので、話しを元に戻します。と言うか、ここからが本文です。前置き長過ぎ〜。
不安定なザックを背負って、なんとか2日目も目的のテント地までたどり着きました。その時は雲が多いものの、まだ、雨の心配もなく。いつもと同じようにテントを建て、夕食を済ませて、地図を広げて翌日のコースを確認して、早めにシュラフに潜り込み、目を瞑りました。
ドーン、ドーン、ドーン。
遠くから打ち上げ花火のような音が聞こえてきます。どこかでお祭りでもやっているのかな? なんてことを考えながらうつらうつらしていたら、午後8時頃から雨が降り出してきました。次第に雨足が強くなってきて、テント内はかなり賑やかになってきました。
ドーン、ドーン、ドーン。
あれ? こんな雨でもまだ花火を上げているのか? と思っていると、ふと気が付いた、あっ! あの音は花火じゃない! 雷だ! 夕方から大気が不安定になっていたということか。合点がいった。花火にしては不自然だよな〜とは思っていたけど、ドーンの音自体は本当に打ち上げ花火にそっくりだったので、思い違いをしていたようだ。
雨音はさらに強くなっている。まぁ、テント内にいれば安全なはず。それとテントを叩く雨の音が、逆に子守唄のようになって、やがて、意識から雨音が遠のいて、いつの間にか眠りについていた。Zzzz… Zzzz… Zzzz…
バサっ。
どのくらい眠ったのか? 突然、何かが覆い被さってきた。ビックリして飛び起きた。しかし、まだ暗くて自分に何が起きたのかは分からない。僕は咄嗟に枕元に置いてあったヘッドランプを取って、ちょっと手こずりながらテントを飛び出した。その瞬間、強い雨が僕の全身を叩いた。あ〜、まだ雨が降っている。これじゃあ、今日のトレイルはスタートからレインウェアを着なくちゃならないのか? なんて全然関係ないことを考えながら、ヘッドランプを点灯させた。
まだ、辺りは薄暗く、ヘッドランプの丸い明かりの輪の中に照らし出されたテントを見て、初めて自分に何が起こったのか理解できた。
テントが半分潰れている。
この時、僕が使用していたテントはNEMO MTETA 2Pでした。このテントは非自立式で2本のトレッキングポールと付属のガイラインとのバランスで立っています。基本的にトレッキングポールだけでも、ガイラインだけでも、立ちません。なので、どちらかが欠けたら、テントは倒れます。まぁ、それが非自立式テントなんですが・・・。
とは言うものの、実際には、場所にもよりますが、ガイラインが1本抜けたくらいでは、ほとんど影響が無い場合もあります。しかし、よく見てみると、今回は2本のガイラインがベグごと引き抜けていて、2本あるトレッキングポールの内1本が倒れていて、テントが半分潰れてしまっています。僕は慌てて、2本のペグをテキトーに地面にぶっ刺して、ポールを立てました。テントは悲しげな表情になっていますが、今は仕方ないです。まだ辺りは暗いうえに、雨が激しく降っていて、のんびりとテントのカタチを整える余裕なんてありません。とりあえず、中に人が入れるスペースは確保出来たので、中に転がり込みます。
しばらくは心臓がバクバクしていましたが、やがて落ち着き。ペグが抜けた理由を考えてみました。しかし、考えるまでもありません。慌てて抜けたペグを刺した時、ぬかるんだ地面に簡単に手で刺せました。恐らく、昨日からの大雨のせいで地面が緩んでペグが抜けやすくなっていたのだと思います。非自立式のテントはガイラインをある程度のテンションで張る必要があります。そのテンションに、地面に刺したペグが耐えられなかったのだと思います。
テントを立てる。を考え直した。
まぁ、今回は理由が分かったので、次回からの対策も立てやすくなっています。僕がとった対策、と言うか、僕がテントを張る時に注意していることは、
- 山岳地帯でのテント泊の時は、非自立式のテントは使用しない。(テントの横に車が横付けできるようなキャンプ場では非自立式テントも使用してます)
- 雨が降っている、または降りそうな時はペグの刺し方を工夫する。(抜けにくそうな場所にベクを刺す。場所によっては石で補強する)
- (ここからは今回のこととは直接関係無いですが、僕がテントを張る際に注意していることです)水辺の側はなるべく避ける。
- 崖の側もなるべく避ける。
この他にもありますが、山でのテントを張るノウハウは別の記事で書く予定です。
取り立てて何かすごい対策をしたわけではないですが、一度このような経験をすると、次からは気を付けるようになりますよね。毎回のように書いていますが、死なない程度の失敗は数多く経験した方がよい。まさに今回のような失敗は自分のテント泊レベルを確実に上げたと思います。もちろん、これ以降、夜中に(夜中じゃなくても)テントが倒れたことはありません。だけど、夜中にトイレに行く時などに、自分のテントのガイラインに足を引っ掛けて、ペグを抜いてしまうことはがしばしばあるのは内緒です。
その他の【山の失敗談】シリーズ
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【失敗談】番外編《勘違いの章》
今回は僕自身の経験では無く、父が経験したことです。自分の経験ではないので、ここに書くべきか悩みましたが、チョットした勘違いが、遭難を引き起こしてしまう可能性があり、しかも、それは、誰でも被害者になり、加害者(と言っても、決して悪意がある加害者ではなく、善意の加害者なんですが)になるかも・・・というようなことなので、書くことにしました。 -
【失敗談】迷走編《世附権現山〜ミツバ岳の章》
自分もここの山域でルートミスした事があるのを思い出しました。具体的に亡くなられた方がどのようなコースを辿っていて、何処で迷われたのかは分かりません。しかし、この時のはいつもより象徴的だったですし、あぁ〜、人ってこうやって誤ったルートに入って行くんだなぁ。と思える内容でしたので、詳しく書いてみたいと思います。 -
【失敗談】撤退編《初めての富士山の章》
僕が初めて富士山に登った(登ろうとした)のは、2006年06月のことでした。それは山登りを始めてまだ半年程度しか経っていない頃のことです。今回はその時のお話です。 -
【失敗談】ビバーク編《灼熱地獄の章》
今回の失敗談は『高島トレイル』を歩いていて、暑さのため計画通りに歩けず、ビバークを余儀なくされ、途中でリタイアしたというお話です。ビバークと言うと、雪山で雪洞を掘って、震えながら一夜を明かす。なんてイメージを持っている人も多いのではないでしょうか?しかし、今回の舞台は真夏の低山です。ある意味、真逆な環境ですよね。 -
【失敗談】テント編《風の悪戯の章》
まぁ、今回もいつものように、致命的な失敗というわけではありません。側から見てると微笑ましい失敗です。YouTubeにおもしろ動画としてアップすれば、そこそこの再生回数が稼げそうです。 -
【失敗談】テント編《骨折の章》
大抵のテントにはその型を維持するための骨(ポール)があります。スリーブにポールを通すもの、ポールにテントをぶら下げるもの、中には、トレッキングポールや木の枝をつっかえ棒のように使うものもあります。例外的に細引きだけでテントを維持させる場合もありますが、まぁ、これは特殊な場合ですね。 -
【失敗談】テント編《逆襲の章》
今回お話するのは失敗と言うより、考えがいたらなかったっていうお話です。僕にもう少し想像力があれば、もしかしたら避けられたかもしれないってことですね。 -
【失敗談】暗黒編
大抵の登山地図にはコースタイムが書かれています。そこそこ山登りの経験のある人なら、自分の運動能力と照らし合わせて、そのコースタイムに対してx0.8とか1.2とか掛けて自分のタイムを割り出して、山行計画を立てたりします。 -
【失敗談】炎上篇
今回は炎上編です。火にまつわる失敗談です。火にまつわると言っても、テント内でバーナーを使って、テントが丸焦げになったとか、カミナリに撃たれて丸焦げになったとか、山頂火口のマグマに落ちて丸焦げになったとか、そんな話ではありません。